県などによりますと、平成元年から去年までの35年間で調べたところ、県内で起きた土砂災害の数は3196件と、全国最多となっています。年間でおよそ88件起きている計算になります。
市街地でも起こり得る土砂災害。どのようにして起こり、どう身を守ればいいか?専門家と考えます。

取材班の近くで崩れる斜面。周囲に大量の水と土砂が一気に流れ出しました。

今から38年前の1986年7月10日。鹿児島市の中心部からほど近い、城山のがけで起きた土砂崩れです。

同じ城山の高台近くの平之町の住宅街でも起き、住宅の裏手の斜面が長さ50メートル・幅30メートルにわたって崩れました。

(鹿児島大学・砂防学 下川悦郎名誉教授)「こんなに木が大きくなっている。当時は崩れて何もなかった」

砂防学が専門の鹿児島大学名誉教授・下川悦郎さんです。発生の直後、現場の調査にあたりました。

(鹿児島大学・砂防学 下川悦郎名誉教授)「本当に市街地のすぐ後ろで、非常に急なシラスのがけが迫っている」

38年前のこの日、鹿児島市は雨量が1日で1か月分の8割にあたる最大300ミリ近くに達しました。市の中心部、100か所以上でがけが崩れ、94棟の住宅が全半壊。18人が死亡しました。

このうち、平之町ではがけ崩れが2度発生し、巻き込まれた5人が死亡しました。

(住民)「当時、崩れた時、電線がわあっと揺れて、何だって言ったら、向こうが崩れたって。その方も亡くなられて、知り合いだった」

崩れたがけの多くは、水を含むと崩れやすいとされる火山灰や軽石が堆積したシラス台地でした。

当時、起きたのは表層崩壊と呼ばれ、長年の風や雨などにさらされ、風化が進んだがけの表面が崩れ落ちる現象です。

下川名誉教授によりますと、24時間雨量が200ミリを超えると崩れるリスクが高まるといいます。さらに、雨量が400ミリを超えると、地盤の奥深くから崩れる「深層崩壊」の危険性が高まるといいます。

これは、がけ崩れが相次いだ38年前の1日の雨量を示したグラフです。5時間ほどの短い時間で一気に雨量が上がっています。

これに土砂崩れが起きたタイミングを重ねると、総雨量が200ミリに迫る時間帯に、相次いでいたことが分かります。

(鹿児島大学・砂防学 下川悦郎名誉教授)「幅5キロ、長さ10~15キロの範囲で(局地的に)降っている。いま言えば、線状降水帯が起きていたと言っていい」「多数の犠牲者を出した災害を招いた」

がけ崩れ現場の近くには翌年、住民らが記憶を後世に伝えるための碑を建てました。住民は災害の記憶を忘れないようにと清掃活動を続けていますが、実際に避難する難しさも感じています。

(住民)「消防団の人が通って『避難してください』という感じで。『(隣人が)いまのうちは大丈夫』と言うなら、じゃあまだかなという感じで待機」

今も相次ぐ土砂災害。都市部で宅地化が進む中、斜面の近くに住宅を建てるケースも増えています。

こうした中、県は、30度以上の急傾斜地など土砂災害のおそれがある区域・およそ2万3000か所をパソコンやスマートフォンで見られるようにしています。この数は全国で8番目に多い数です。

(県砂防課 久野聡課長)「土砂災害、がけ崩れ・土石流というのは、発生してからの避難では間に合わない災害。日ごろからマップを見てほしい」

ただ、鹿児島大学の下川名誉教授は、土砂災害警戒区域に指定されていないがけでも危険性はあるといいます。

(鹿児島大学・砂防学 下川悦郎名誉教授)「近年の場合は24時間雨量が300ミリを超えて、400ミリを超えることも。警戒区域に指定されていなくても、雨の降り方によっては崩れることもある」

例え、がけの近くに住んでいなくても、注意は必要です。

(鹿児島大学・砂防学 下川悦郎名誉教授)「避難する場合も避難所までは、川やがけの近くを通ったりする。十分配慮しながら避難することが大事」

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