2022年3月、大阪府泉南市で13歳、中学1年生の男子生徒が自ら命を絶った。彼は担任にいじめを訴えたが、「お前の話は信用できない」と言われ、不登校になっていた。2024年5月28日、遺族の求めに応じ設置された第三者委員会は報告書を取りまとめ、市長に提出した。報告書には「学校や教員への不信が募ったことなどが自殺につながった」などと指摘された。

一方、少し離れた京都市に住む同じ13歳、中学2年生の女子生徒も学校に行けなくなった。

クラスメイトのいじめを目の当たりにし、担任に相談した。返ってきた言葉は「社会で生きるためには我慢しなければならない」、だった。

不登校の中学生はいま、20人に1人。年々増え続け、過去最多を更新している。小中高生の自殺者数も2022年に過去最多を記録した。これ以上、悲劇が繰り返されないように。京都市の女子生徒は、ありったけの思いを岸田総理への手紙に託した。

2人の「13歳の声」に耳を傾けた。

少年が最期に選んだ場所は…

13歳の少年が亡くなった場所

大阪府泉南市。ひと気がない静かな空き地。ここで当時中学1年生だった松波翔さんが、自ら命を絶った。

2022年10月、母親の千栄子さん(49)は、息子が最期に選んだ場所を初めて訪れた。自宅から歩いてわずか5分。どうしても行くことができなかった場所だった。翔さんのためにも見ておかなくては、と決心した。

翔さんは母親と兄との3人暮らしだった。亡くなった日の朝、「誰も知らない遠くへ行く」と兄に告げて家を出たという。

相談しても“お前の話は信用できない”

小学生時代の翔さん

中学1年生の夏休みが明けた頃から不登校だった。当時のままに残されている部屋にある教材には、ペンも挟まっていた。親に言われなくても自分から勉強をする子どもだった。不登校で遅れた学習を取り戻そうとしていた。

小学生の頃から正義感が強く、クラスの輪に入れない子がいると、気になって声をかける優しい少年だった。

しかし、小学3年生の頃、2つ上の兄がいじめを受けるようになり、翔さんも上級生にからかわれるように。先生に相談しても真剣に受け止めてもらえず、「お前の言うことは信用できない」と言われたという。次第に学校に居場所を失い、不登校に。小学6年生の1年間は一度も学校に行けなかった。

不登校だった過去を馬鹿にされ“少年院帰り”

母親や兄と仲が良かった翔さん

母親の千栄子さんは、翔さんが小学4年生のときに離婚。愛息を家でひとりにするのが心配で、自らの職場である引きこもりの若者を支援するNPO法人へ一緒に通勤していた。

千栄子さんがいつも身につけているブレスレットは、翔さんがお年玉やお小遣いをコツコツ貯めて、プレゼントしてくれたという。母思いの少年だった。

夢は、検察官になることだった。司法試験を受けるために勉強を頑張らねばと、中学から心機一転、学校に通うことを決心した。

しかし、入学してまもなく不登校だった過去を馬鹿にされた。「少年院帰り」などという言葉まで耳にした。担任に相談しても、「誰の発言かわからないと指導できない」と言われたという。

同じ中学校に通っていた翔さんの兄は、当時の弟をこう語る。

「『先生はいじめも解決できないし信用できない』と弟は言っていました。『自分は変わろうとしたのに大人は全く変わらない。助けてくれない』と話していました」

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