教員によるわいせつ事件の裁判で、一般の人が傍聴できないよう、横浜市教育委員会が職員を動員して傍聴席を埋めていたことが明らかになった。この問題について音楽プロデューサーの松尾潔さんが5月27日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Groooow Up』で、組織ぐるみの対応を痛烈に批判した。
税金を使って組織ぐるみの隠蔽
これは許せない話です。2019年から2024年にかけて、強制わいせつ罪に問われた小学校の校長など、教員が被告となった4つのわいせつ事件の公判で、横浜市教育委員会が職員を動員して傍聴に行かせて席を埋め、一般の人たちの傍聴を阻んでいたことを公表しました。
公開の法廷で開かれる裁判は、マスコミの注目を集めるような大事件などでない限り、傍聴席は先着順で、かつ、立ち見は認められていないので、動員をかけて席数を満たす人たちを並べておけば、一般の人たちは入れません。
これは東京新聞のスクープだったのですが、要は組織ぐるみで不利な情報を隠蔽したということです。中には旅費を支給するケースもあったということですが、当然、その原資は税金です。
出張を命じる文書に「待ち合わせは避けて」
市教委の説明によると、混乱を招かないためにだとか、被害者からの要望もあったなどを理由として挙げていますが、それを裏付けるやり取りの記録が残っているかというと「それは残ってない」と言っています。
おまけに動員をかけるときには、集団で来たことがわからないように「待ち合わせは避けてください」と出張を命じる文書に注意事項としてあらかじめ書いていたという用意周到ぶり。市教委は今回その文書を突きつけられて「市の事案だと悟られないようにというのは実際ありました」と認めています。
国民の知る権利が脅かされる
この問題の論点としてまず、裁判公開の原則という、憲法で保障されている基本的な事項が大きく歪められているということが挙げられます。国民の知る権利というものが、大いに脅かされるということです。
東京新聞の取材にジャーナリストの江川紹子さんが「裁判というものは、それ(犯罪)自体を裁くということはもちろん、事件の諸事情や原因をつまびらかにすることで再発防止を考えるための場」と答えていますが、そういう大きな目的もあるわけで、今回のようなことをするとそれが失われます。
もしかしたら、プライバシー保護の観点で、本当に被害者側から要望があったのかもしれません。でも「要望があったから動員をかけよう」とするのが市教委の正しい対応だったのでしょうか? 普通に考えて、検察庁に相談を促すことじゃないのかと思います。繰り返しになりますが、その動員に旅費を支給するのは「どうなっているんだ横浜市は」と思う話です。
欧州の小国以上の「ジャンボ都市」
「横浜市は」と言ったのは、何も感情だけで話しているわけではなく、日本を代表する政令市だからです。横浜市は人口が377万人を超えています。これは第2位の大阪市(275万人)を、100万人あまり上回っているという、突出したジャンボ都市です。
ちなみに九州で一番大きな政令市はもちろん福岡市で161万人です。福岡の優に2倍以上の横浜市で起こったこの出来事は、市長の睨みが効いていないということが理由の一つにあると思います。(※人口は2020年国勢調査)
2021年に混迷を極めた横浜市長選がありました。立憲民主党が連れてきて共産党がバックアップしたという図式でよく語られる、横浜市立大学教授の山中竹春さんが市長になったわけですが、その選挙のときも、色々きな臭い動きがあったと噂されています。
『ハマのドン』(2023年公開)というドキュメンタリー映画が作られましたが、それぐらい横浜という、大きくて古い、日本の文明開化が始まった街では、裏利権というものが渦巻いているということでしょうか。
実態は分かりませんが、僕もかつて横浜のラジオ局で何年間かレギュラー番組をやっていましたから、ある程度の横浜の財界の座組というのは分かっているつもりです。ヨーロッパの小国以上と言われているこの市をまとめるというのは大変だろうなとその頃から思っていました。
ヨーロッパの小国と言いましたが、人口でいうとクロアチアとかジョージアとかと同じぐらいです。スロベニアとかマケドニアより人口は断然多いです。それを市長という言葉で括ると、リアリティが表現できないぐらいの権力を持つことになるわけですから、ある時はトップダウンが必要だろうし、ある時はその組織をうまく懐柔するようなリアリズムも必要だと思います。
いずれにせよ、こういうことを繰り返さずにいてほしいですし、福岡市ももちろんですが「他の大都市でも表面化していないだけで起こっているんじゃないか」という疑念を抱かせることは、罪深いと思います。
普段から市民が見張っておくというのも一つですし、職員の職業倫理を今一度ここで改めてほしいと思います。
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