東京都台東区を拠点に70年近く画工(絵師)として活動する田中辰斎(しんさい、本名・憲治)さん(84)が、矢先稲荷神社(台東区松が谷2)の神楽殿シャッターに描いた絵を修復した。1698(元禄11)年に火災で焼失した「浅草三十三間堂」を中心に当時の風景を再現した絵で、製作から7年の月日であせていた色が鮮やかによみがえった。

◆新たに「かっぱ橋道具街のルーツ」

「描いているうちに発想が広がっていく」と話す田中さん=9日、東京都台東区松が谷で(小形佳奈撮影)

 「浅草寺社景跡三十三間堂」と名付けられた絵は、高さ2.1メートル、幅6メートル。6月15、16日の神社例大祭を前に、4月1日〜5月20日に修復。北上野の自宅から油性絵の具のボトルなどを積んだリヤカーを引いた自転車で通い、絵の具を混ぜて200色を使い分けた。  今回、神社の氏子でもあるかっぱ橋道具街の経営者たちから「道具街のルーツを示すような絵を」と頼まれ、商店の他、町人風や職人風の人物50人を新たに加えた。田中さんは「描いているうちに発想が広がるんだよ」と振り返った。

色の抜けた人物や馬の輪郭を細かく描き足す田中さん

 1642(寛永19)年に建立された浅草三十三間堂は、矢先稲荷神社の近くにあった。関東大震災と空襲で多くの資料が失われ、田中さんは国会図書館や江戸東京博物館などで調べ、京都の三十三間堂の許可も得て、2017年に製作し奉納した。(小形佳奈、写真も) 

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