現職の国会議員が逮捕されたことで有名な「オレンジ共済事件」。この事件「国会議員が何かアヤシいことをやって、結果として事件になった」という話ではありません。「最初から詐欺をたくらんだ詐欺師が、スムーズな詐欺のために国会議員になった」という前代未聞の事件だったのです。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)

オレンジ共済組合とは?

1986年「オレンジ共済組合」という名前の無認可共済組合が設立されました。その事実上の主宰者が友部達夫元議員(*故人・以下敬称略)です。
83年から「年金党」なる諸派政党を率いながら落選し続けた人物でした。

その友部のオレンジ共済組合、転機となったのは1992年に売り出した「オレンジスーパー定期」という「金融商品」でした。

「6.74」だの「7.02」だの端数は「もっともらしく見せるために適当につけた」と後に判明しました。

このオレンジスーパー定期は、元本保証と約7%という「微妙な高利」をうたっており、バブル崩壊後の金利低下で、売れに売れました。

念願の国会議員に

友部は年金党を解散し、95年の参院選では新進党から出馬します。
オレンジスーパー定期の莫大な収益の一部を政界工作費にあてたと言われています。比例名簿順位は13位。これは当時の新進党としては十分当選確実ラインでした。結果、初当選。友部はこの後、国会議員の信用でさらにオレンジスーパー定期を売りさばきます。

95年といえば「阪神淡路大震災」と「オウム真理教事件」のあの年です。

オレンジ共済組合は、会員数2500人、93億円を集めました。ところが実はこのカネ、ほとんど運用されてはいなかったのです。それもそのはず、93億円のカネは、ほぼすべて友部ファミリーの遊興費にあてられていたからです。特に次男の豪遊が注目を集めました。

これ以外にも1泊30万円の高級ホテルに連泊、海外でブランド漁りなど「週刊誌ネタ」に事欠きませんでした。

1匹数百万円もする熱帯魚アロワナを十数匹も飼ってみたり、その熱帯魚の飼育用に専用マンションを買ってみたり、フェラーリやロールスロイスを買うだけではあきたらず、アイルトン・セナ選手がF1レースで使ったクルマも買ったりしました。

巧妙な手口で「ポンジスキーム」

オレンジスーパー定期で集めた93億円のうち、63億円は国会議員になってからのものです。友部は国会議員の地位をまさにカネ集めの道具として使っていたのです。
友部の手法は巧妙でした。特徴は3つあります。

挑戦5度、執念で得た議員バッジでしたが、本当は何がしたかったのでしょう。

①「共済」を名乗って安心させた
友部本人は「オレンジ共済は、こくみん共済、都民共済、KSD、JA共済に続いて国から5番目に認可を受けた共済である」とウソを吹聴していました。これで顧客を安心させたのです。しかし、実態は無認可でした。ところが「国会議員がやっている」ということで誰もが「きっとそうだろう」と思い込んだのです。

代理店も「まさか国会議員が主宰する共済が、詐欺的商品だったとは」と証言しました。

②「ほんの少し高い金利」だったこと
オレンジスーパー定期は、普通の生命保険や損害保険などと並んで代理店で売られました。20%や30%ではなく、7%という微妙なセンが「ウソっぽくない」「他の金融商品より少しだけ有利」と顧客の心を捕まえたのでしょう。

利率は7%「そこまで破格な利益ではない」というのがウマいところでした。

③当初は配当金を払っていた
当初、配当金は毎月支払われていたと言います。しかし、実態は単なる自転車操業で、新しい顧客が払ったカネをそのまま配当に回していただけでした。今から思うと、いわゆる「ポンジスキーム」という詐欺の典型例で、破綻の日まで顧客をつなぎとめ、安心させ、ますます買わせる、ための配当金だったのです。

当初、配当金は毎月支払われ、顧客は安心してしまいました。典型的な「ポンジスキーム」の手法です。

当然のように配当はやがて滞りました。そして、すべてがウソだったと分かったのは、友部ファミリーが全部を使い切った後だったのです。

逮捕、収監、もちろん政界追放、しかし……

逮捕の瞬間。友部は「みんな秘書がやった」と言い放ったそうです。

オレンジ共済は破綻。初当選から1年半で、友部は出資法違反および詐欺罪で逮捕されました。判決は懲役10年。しかし友部は失職までの約4年間、不登院の状態で議員のイスにしがみつき続けました。

最高裁で、懲役10年の実刑判決が確定し、ようやく失職しました。

その間、1億6000万円の議員歳費が支払われ続けましたが、そのほとんどは被害者団体が差し押さえたそうです。

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