日本全国で水道管の老朽化が進み、破裂事故が後を絶ちません。なぜ古くなるまで放置していたのか?水道料金は値上げされるのか?生活に直結する「水道」の現状について様々な情報をまとめました。

地球〇〇周分も!?40年モノの“老朽化”した水道管

 日本全国の水道管の長さは合計74万kmで、地球18.5周分。そのうち老朽化した水道管は地球4周分に及んでいます。耐用年数40年を超えた水道管を、国が定めたルールで老朽化と呼んでいますが、40年を超えるとすぐ使えなくなるわけではなく、それぞれの状況によって変わるようです。

 老朽化による水道管の破損事故は年間2万件以上。2024年5月21日には、神戸市長田区で突然マンホールから水が噴き出しました。「なぜ40年以上も放置していたのか」「値上げをするなら、もっと前の段階で投資しておくべきだった」といった声もあるようですが、簡単には解決できない問題があります。

“老朽化”は都会から…大阪市内の50%以上が古い水道管

 水道管の設置が始まったのは高度経済成長期で、1980年代には全人口に対する設置率が90%を超えました。つまり、日本で暮らす90%の人が「家の蛇口をひねると綺麗な水が出てくる」という状態になったのが1980年代ということです。

 そして今、その水道管が待ったなしの状況に陥っています。まず、耐用年数100年とされている最新の水道管に比べて、40年前の水道管は材質面で劣っています。そして、高度経済成長期には都会から優先的に水道管を設置したため、今、都会から老朽化が進んでいます。

 では、大阪府における水道管の老朽化率はどうなっているのでしょうか。40年以上前の水道管の割合が50%を超えるのが、大阪市・門真市・阪南市。40%以上のエリアが池田市・箕面市・摂津市など。30%以上のエリアが吹田市・大東市・東大阪市などとなっています。人口の多いエリアや府内の中心地から老朽化が進んでいることが分かります。

1kmあたり2億円!水道管の交換費用…財源確保が難しいワケ

 老朽化した水道管を取り換えるには、1kmあたり約2億円という多額のお金がかかるといい、その原資は利用者の水道料金です。しかし、水道料金からの収入は減っています。

 神戸市の場合、2000年には345億円あった収入が、 2022年には289億円にまで減少。人口減少に加えて、節水機器が普及して、水の需要が減っているのです。

 一方、水道料金の値上げは簡単ではありません。水道法第1条に「豊富低廉な水の供給を図る」とあり、自治体が努力を重ねて水を安く提供してきた背景があるからです。ここ30年、水道料金はほとんど変わっていません。

 また、水道料金を上げるには議会の承認が必要で、議会の承認を得るには市民の賛同が必要。そして、政治家は市民の賛同が得られない政策を実行したくない。つまり、市民が「将来のために水道料金を上げてもいいよ」と言えるかが問題なのです。

宝塚市で19%増…関西でも値上げ始まる 人口少ないエリアでは2倍に!?

 月々の水道料金の全国平均(家庭用10立方メートル)は、2000年で1450円、2021年で1570円。この間に物価は上がっていて、資源エネルギー庁によると電気代はここ10年で約3割上昇しています。しかし水道料金だけは上がっていません。

 ただ、関西でも値上げを決めた地域もあります。神戸市で14.2%、岸和田市で18.9%、宝塚市で19%値上げされました。宝塚市の場合、高低差があって山間にも人が住んでいるという地理的条件があり、もともとコストが高く、5年連続で赤字を記録したため値上げに踏み切りました。

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