ジェンダー平等社会の実現を掲げ、昨春の統一地方選で初当選した女性議員らが現状や課題を報告するイベントが4月5、14日、東京都内で開かれた。女性らの立候補を後押しした団体が主催。年配男性が多数を占める地方議会を変えるため、見えてきた必要なことは何か?(奥野斐)

◆知られざる「独特の文化」

 「議会という独特の文化がある。前例がないことをやろうとすると、嫌な顔をされチクチク攻撃された」

4月5日に開かれた報告会に登壇した東京都内の市区議員8人(FIFTYS PROJECT提供)

 都内の自治体議員8人が登壇した5日の報告会で、練馬区議の石森愛さん(39)=立憲民主党=は1年をこう振り返った。性教育や共同親権について質問しようとした際、他会派がよく思っていないと人づてに聞いた。持参した水筒は、中身を紙コップに移してから飲むよう注意されたこともある。  「議会には邪魔したり意地悪をしたりする人もいる。私たちは連帯し、歯を食いしばりながら議会にとどまることが大事」と語った。  イベントは、昨年4月の統一選で20〜30代の女性議員を増やそうと動いた「FIFTYS PROJECT(フィフティーズ・プロジェクト)」が企画。支援した29人のうち、今回登壇した8人を含む24人が当選した。

◆議長に「ハラスメント防止措置」申し入れ

地方議会でジェンダー平等を進めるためにできることを話す世田谷区議の小野瑞季さん(左から4人目)、サポーターの清藤千秋さん(同5人目)ら=14日、東京都武蔵野市で

 「女性議員らへの風当たりが強いと聞いているが…」と会場からの質問に答えたのは、杉並区議の寺田陽香さん(36)=立憲民主党。「新人が壇上に立った瞬間からおしゃべりが始まる。ちょっと言い間違えたら笑いが起きる。質問に答える職員にまでやじが飛ぶこともある」。杉並区議会は、性別非公表の1人を除く議員47人中、女性が24人。昨年9月には、議員8人がハラスメント防止措置を正副議長に申し入れたという。  昨春の改選前から女性が4割を超えていた武蔵野市議会は、新人も活動しやすかったようだ。市議の酒向(さこう)萌実さん(30)=無所属=は女性議員に囲まれた男性議員が「両手に花だな」と言うのを聞いて注意しようか迷った際、年長女性が「そういうことは言わないの」と制したと紹介。「数がいることで変わる」と実感した。

地方政治やフェミニズムについて講演を行う上野千鶴子さん

 14日に講演した上野千鶴子東京大名誉教授は、「議員になったら最初にやってほしいのは議会制度改革」と強調。「質問時間に制限があるとか、赤ちゃん連れはダメ、スニーカーやジーンズはNG、といったブラック校則並みの根拠のない慣行がある」と指摘し、「言えば変わることは多い。小さな成功体験を積み上げて」とエールを送った。  トークショーもあり、世田谷区議の小野瑞季さん(31)=世田谷・生活者ネットワーク=を支援する清藤(せいとう)千秋さん(31)は、小野さんが初めての議会質問中、年配議員が大声で話し始めたため、議員間のハラスメント防止を求める陳情を出したと紹介。「陳情は議会に『見てますよ』と伝えるツール。市民の圧が大切」と強調した。

◆女性議員割合、市区でも20%に満たず 町村は13.3%

 昨年4月の統一地方選後、女性議員の割合は全国平均で微増したが、依然低い。全国市議会議長会によると、東京23区を含む815市区議会の女性割合は17.8%(2022年)から19.7%(23年)に。全国町村議会議長会の調査では、926町村議会で、女性は12.0%(22年)から13.3%(23年)になった。いずれも7月時点。  町村議長会が4月8日に公表した町村議員のなり手不足の報告書でも、「女性議員割合が依然として低いままで、その改善がなり手不足を解消する決め手の一つ」と指摘。ハラスメント対策の強化などを求めた。  世界経済フォーラムの23年版「ジェンダー・ギャップ(男女格差)指数」で、日本は146カ国中125位。特に政治分野は世界最低水準の138位だった。 

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