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<視点>同性婚否定は「違憲」 憲法の「両性の合意」とは 論説委員・桐山桂一
同性カップルの結婚を認めない民法などの規定を憲法違反とした、3月の札幌高裁判決は大いに評価したい。司法の良識を示していよう。 社会的に少数派として、差別に苦しんでいる人々が確実に存在するからである。 判決が「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項に直接、踏み込んでいる点を特に評価したい。 同項は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定めるが、判決は「人と人との自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨で、同性婚も保障している」と認めた。 極めて明快といえ、画期的でもある。 なぜなら、政府は従来、男女を示す「両性」の文字に引きずられて、「現行憲法下で同性婚の制度を認めることは想定されていない」との立場をとって、何ら立法措置を講じなかったからだ。 その点を札幌高裁はどう考察しているだろうか。判決文にはこう書かれている。 〈従来、憲法24条は異性間の婚姻を定めたものと解されてきた〉 〈制定当時も同性間の婚姻までは想定されていなかったと考えられる。婚姻と家族の制度において、旧憲法下の家制度の制約を改め、対等な当事者間の自由な意思に基づく婚姻を定める趣旨により、両性との文言が採用されたと解される〉 つまりは結婚の仕組みが「家」中心だった明治憲法下の制約から脱することが、「両性の合意」の言葉に反映されているとの解釈だ。 かつ判決はこうも言う。 〈当時は、いまだ同性愛については、疾患や障害と認識されていたとの事情もあったと思われる〉 〈性的指向は生来備わる性向であり、異性愛者と同性愛者それぞれ取り扱いを変える本質的な理由がない〉 法令解釈では、文言のみならず、目的をも踏まえねばならない。だから、当時は想定していなかったとしても、「当事者間の自由意思による結婚」が目的・主眼ならば、社会や国民意識の変化にも呼応すべきなのだ。 共同通信の世論調査では、国民の7割は同性婚を認める意思を示しているし、先進各国での法制化の事実もある。 「個人の尊重」がより重視される時代だ。札幌高裁判決が言うように、性的指向は「人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴」で、人格権の一つでもある。 そう考えれば、憲法24条は「人と人との自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨」の規定であることが、おのずと判明していく。 何と進歩的な判決であろうか。良心も感じられる。 地裁レベルでは既に6件の判決があり、そのうち「違憲・違憲状態」が5件。札幌高裁の「違憲」の結論は重く受け止めるべきで、同性の婚姻を速やかに法制化すべきである。