いまや多くの人にとって欠かせないSNS。そこに今、人々の関心を集める過激ともいえる投稿が相次いでいます。そうした状況を生み出しているものとは…

なぜ?つばさの党の“選挙妨害”

つばさの党YouTube
「立憲偽善者、へいへいへい、消費税上げるぜ、へいへいへい」

4月の衆議院補欠選挙で、他の陣営の演説を妨害したとして公職選挙法違反の疑いで逮捕された「つばさの党」の代表者ら3人。

消費税廃止などの政策を掲げる一方で、SNS上で支援者から他の候補の演説場所などの情報を集め、妨害に赴いたとされ、自分たちの行動を繰り返し動画サイトで配信していました。

「つばさの党」幹事長 根本良輔容疑者
「すごい今、広告収入増えている。再生数が半端ではない。究極の落選運動だと思う。俺はこれをビジネスにしようと」

こうした動画は再生回数に応じて、収益が得られる仕組みとなっており、捜査関係者からは、選挙運動や政治団体の名を借りた妨害集団で、“選挙犯罪ビジネス”という見方も出ています。

ジャーナリストの古田大輔さんは、YouTubeで収益を上げることが以前より難しくなってきているとしながらも、人々の関心が集まると…

ジャーナリスト 古田大輔さん
「支持者とか支援者が出てくる。そういった人たちが大口で寄付をしていく、そういう流れも出てくる。クオリティ以上に扇情的かどうかがコンテンツを作る際の尺度になる。これが“アテンション・エコノミー”の怖さ

アテンション・エコノミーの危険性

“アテンション・エコノミー”とは人々の関心や注目を集める情報が、経済的な価値を持つというものです。

総務省は、「過激なタイトルや内容、憶測だけで作成された事実に基づかない記事などが生み出されることがある」と、その危険性に警鐘を鳴らしています。

ガーシーこと東谷義和 元参院議員(2022年12月)
「裏でいまだコソコソやってる奴おんねんなら、覚悟しておけよってことや」

例えば、芸能界のスキャンダルなどを発信する暴露系ユーチューバーとして有名になったガーシーこと東谷義和氏は2022年7月の参院選で初当選し、国会議員に。

ガーシーこと東谷義和元参院議員(2022年7月)
「国会で寝ているおっさん議員、全員たたき起こしますから」

しかし、一度も国会に姿を見せることなく除名。俳優らを脅迫したなどの罪で、2024年3月、有罪判決が確定しました。

捜査関係者によると、動画の広告収入で1億円以上を稼いでいた、といいます。

こうした“アテンション・エコノミー”の舞台となっているのは、他にも。

Xの仕組みにつけ込んだ“インプレゾンビ”

イーロン・マスク氏のX(2023年8月)
「広告収入の分配を受けるにはXプレミアム会員である必要がある」

SNSのツイッターを買収し、Xと名称を変えたイーロン・マスク氏は2023年、実質有料プログラムを導入。いくつかの条件を満たした有料会員などは、閲覧数に応じて報酬がもらえることになったのです。

ところが、この仕組みにつけ込んだともいえる投稿が、今SNS上に次々と出てきているのです。それが「インプレゾンビ」です。例えば、あるニュースにつけられた投稿を見ると…

ジャーナリスト 古田大輔さん
「例えば、袴田さんの死刑求刑に関するツイート(投稿)で、不自然な投稿がある。『様子を見て様子を見るべきです』、日本語として不自然ですね。人気の一覧の投稿の中にあるから、インプレッション(表示回数)も自然と上がってしまう。こういうのを狙っているインプレゾンビではないかと」

インプレとはインプレッション、SNS上で投稿が表示された回数です。投稿が話題になればなるほど、回数は増加し利益につながるといいます。

こうした利益が目的で、SNS上に投稿などを繰り返すアカウントを「インプレゾンビ」と呼ぶのです。

関係のない動画で注目も…

2024年1月、能登半島で最大震度7を観測した大地震。地震当日、中東在住とみられる男性が「逃げて下さい」という文面とともに、この地震とは関係のない映像を投稿。表示回数は73万回を超えました。

ジャーナリスト 古田大輔さん
「これは明らかに東日本大震災の時の津波の映像。この文言(「逃げて下さい」)も実は、他の投稿をコピペして使っている。災害という非常に注目を集める事象が起こったときに、それに乗っかって自分にも注目が集められようとする」

偽・誤情報への対応は

また2023年8月、ハワイ・マウイ島で100人近くが犠牲になった大規模な山火事が発生した際には、警察当局はSNS上の偽情報の対応に追われたとしています。

こうした怪しい投稿がSNS上で出回ることについて、古田さんは…

ジャーナリスト 古田大輔さん
「表現の自由や言論の自由もあるわけで、何をしたらだめなのかということに関して、そんなに簡単に白黒つけていくということは非常に難しい。そういう時にどういうコンテンツがだめなのか、ルールを議論していく必要がある」

利益を目的として、過激な、あるいは無意味な投稿を次々と生み出す「アテンション・エコノミー」。それにどう対応していけばいいのでしょうか。

(「サンデーモーニング」2024年5月26日放送より)

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