宮崎県日南市で江戸時代から続く伝統的な黒糖づくり「さとねり」を守る取り組みです。

「さとねり」とは、黒糖を作る行程のことをいいます。
黒糖は、サトウキビからしぼり汁を抽出し、それを釜で煮込んで飴状になるまで練って作られます。
この練る作業が「さとねり」です。

現在、「さとねり」の工房は老朽化が進み、後継者不足も課題となっているのですが、伝統を守るためにクラウドファンディングが始まろうとしています。
関係者の思いを取材しました。

伝統的な「さとねり」を続けているのは、今では一人だけ

日南市風田にあるとある工房。
ここで冬の時期に行われるのが、300年続く黒糖の伝統的な製法「さとねり」です。

この工房で長年、黒糖づくりを続ける平島二三夫さん(67歳)。

江戸時代から始まった日南市の黒糖づくりは、明治時代に最盛期を迎えたということですが、伝統的な「さとねり」を続けているのは、今では、平島さん一人だけとなっています。

(風田製糖組合 平島二三夫さん)
「(さとねりを始めて)もう、40年、50年近くなります。12月と言ったら、ここに来て、さとねりするのが楽しみと言ったらおかしいけど、そういう感じですよね」

長年の伝統を継いできた場所ですが 老朽化が進む

今からおよそ100年前の1929年に建てられたこちらの工房。長年の伝統を継いできた場所ですが、ある問題が…

(風田製糖組合 平島二三夫さん)
「ここ見てください。ほら、ここが崩れたりしている、こういう感じで。だから、ある程度悪い時は補修したりしたけど、台風で屋根が飛んだりする」

老朽化で雨漏りするほか、「さとねり」に使う釜なども劣化が進んでいます。

こうした状況を何とかしたいと立ち上がったのは意外な人物でした。

(宮崎カカオ 大田原尊之さん)
「元々、私が宮崎県職員だった時に平島さんと業務の関係で関わりがあって」

歴史ある「さとねり」を途絶えさせたくない

宮崎市の農家、大田原尊之さん(26歳)。

クラフトチョコレートに魅せられて、去年、県庁職員から転職し、カカオ農園を開いた経歴の持ち主です。

(宮崎カカオ 大田原尊之さん)
「(県庁職員時代)どうしてもこうした『さとねり小屋』だったり、ここら辺のものが老朽化が進んで、なかなか大変という話は聞いていて、それを修繕したいけど補助金とかもなかなか使えないという話も聞いていて、すごく心苦しかった思いがあった」

「歴史ある『さとねり』を途絶えさせたくない」との思いから、大田原さんが平島さんと共に今月末からスタートさせるのが、クラウドファンディング。

大田原さん自身もカカオの生産のためにクラウドファンディングで応援してくれる人を募った経験があったからです。

(宮崎カカオ 大田原尊之さん)
「自分としても『さとねり』が残ってほしいなっていうところもありましたので、なんとか一緒に頑張ってやりましょうということで」

伝統を守るとともに 黒糖とカカオのコラボも

23日は、県内外から訪れた企業の経営者や農家などが工房を見学する機会があり、平島さんと大田原さんがクラウドファンディングに取り組むことなどを伝えました。

平島さんの作った黒糖を味わった見学者たちは…

(見学者)
「こういう釜で、薪を使って炊く伝統的な工法でされてるのはびっくりして、ぜひ、この伝統がこれからも続いた方がいいなと思って、僕もお手伝いできることがあればしたいなと思ってます」
「この機会に、ぜひ、みんなお友達になってバックアップしたいと思いますから、頑張ってください」

平島さんと大田原さんは、「さとねり」の伝統を守っていくとともに、コラボ商品の展開なども視野に、魅力を発信していきたいと意気込みます。

(宮崎カカオ 大田原尊之さん)
「カカオはうちで作って、平島さんの砂糖を使ったチョコレートとかも作りたいということも考えていたので、宮崎県産チョコレートをしっかり作っていって、県内外に発信していきたいなと思っています」

(風田製糖組合 平島二三夫さん)
「この火も僕の時代で消すわけにはいかないからですね。息子、孫たちにもずっと続いてほしいなと思ってるんですよ、これは。日南でここしかないから、それをずっと続けてほしいと思っています」

(スタジオ)
クラウドファンディングは、今月31日から始まり7月12日まで行われます。

返礼品には、平島さんの黒糖を使ったガトーショコラのほか、「さとねり」で使う釜に支援者の名前を刻むといったものも用意されているということです。

※MRTテレビ「Check!」5月24日(金)放送分から

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