都市部でミツバチを飼育する「都市養蜂」です。岡山市の市街地中心部で行なわれている模様をこれまでお伝えしてきましたが、今回は別の新たな動きです。ミツバチの巣箱が今回置かれたのは、皆さんも普段よく行くであろう、あの場所です。

思わぬところにミツバチの巣箱

美味しい蜂蜜を作ってくれるミツバチ。一匹のミツバチが一生かけて集めることのできる蜂蜜の量は、ティースプーン1杯にも満たない程の量と言われています。そのミツバチの巣箱が思わぬところに設置されました。

(岡山津島郵便局 野村和正局長)「岡山津島郵便局の屋上です」
岡山大学津島キャンパスのすぐ近くにある岡山津島郵便局。巣箱が置かれたのは、その屋上です。

(利用者)
「ここに?ビルの上っていうのは聞くけどここも?はー、知らなかったです」
「養蜂?街中でそういうの、自然と繋がるっていうのはすごくいいことだと思います」

緑化促進や環境教育などを目的に、近年増えている「都市養蜂」の一環です。

(岡山津島郵便局 野村和正局長)
「これは日本ミツバチなので、山の中から飛んできてくれたんだと思います」

日本の在来種で野生の二ホンミツバチ。津島郵便局に集まるのは、周辺にある半田山などから飛んできた二ホンミツバチと思われます。セイヨウミツバチと比べ、飼育が難しいとされ、また蜜の収穫量も少ないため、二ホンミツバチの蜂蜜はかなり貴重なものと言われています。

(岡山津島郵便局 野村和正局長)
「5年前、2019年ぐらいから始めた。東京の地方創生をやっているところが、銀座のど真ん中で養蜂をやっていたんですよね。東京でできるんなら岡山でもできるかなと思ったのがきっかけで。いろいろ勉強していたら日本ミツバチっておもしろいなってことになって、で、やってみようと」

養蜂を通じて地域に貢献 山椒栽培も始まる

地域の活性化に繋がればと野村さんから始まった岡山の郵便局での養蜂。今では、養蜂の面白さ・ミツバチの可愛らしさに触れた、同僚の郵便局長らも野村さんの活動に賛同しその輪は岡山市・吉備中央町などに広がっています。現在巣箱は、郵便局の屋上や郵便局長の実家、さらにはOBが所有する山など8か所に設置され、約20万匹の二ホンミツバチが飼育されています。養蜂を始めると聞いた郵便局の職員は。

(岡山津島郵便局 遠藤美緒さん)
「びっくりしました。成り立つとは、私は思っていなかった。そんなこと(街中で養蜂)ができるなんて知らなかったから」

(岡山津島郵便局 土山暢利さん)
「蜂はちょっと怖いなってイメージがありましたけど、仕事だけでは味わえないというか、やっぱり自然界の凄さというか感じます」

(岡山津島郵便局 野村和正局長)
「郵便局の会社の方には、CSR活動に登録しているので、本業に支障が出ない程度にお世話をしてもいいよと、で、このミツバチの養蜂を通じて地域に貢献してくださいというのが条件でやらしていただいています。認めていただいています」

郵便局での養蜂を始めて以降、活動に参加する郵便局員らは、地域の環境や生態系により目を向けるようになり、色々な輪も出来始めています。

(岡山津島郵便局 野村和正局長)
「養蜂をするにあたって、地域の方とお話をする機会が多くなって、耕作放棄地と呼ばれているところが目立ってきて大変なんだという話になって、それだったら我々でお手伝いできるようなことが何かあるかなということで、始まったのが山椒栽培」

巣箱を設置している岡山市御津地区では山椒栽培を始めました。耕作放棄地が増えると害虫や雑草などで土地が荒れ、結果、ミツバチの数にも影響してきます。そのミツバチが育つ環境を維持するためにも、このような里山保全が重要となってくるのです。また山椒の栽培はイノシシが強い香りを嫌うことから獣害対策にもなり、さらには収入源としても期待されるといいます。

(山椒を栽培しているゴキゲンふぁ~む藤元実さん)
「郵便局ならではみたいなところもあるんかなって気はしましたけど、地域密着というところでね。耕作放棄地をどうにかしてくれとか、そういう話が郵便局から出ていると」

目指すは蜂蜜を通じた地域おこし「特産品の開発も」

さらに一歩進んで、イノシシやシカなどを捕獲するため、狩猟免許を取得し罠を設置した郵便局長も。全てはミツバチから始まった動きです。

(御津高津郵便局 河田進局長)
「イノシシの数が増えているのに、狩猟免許を取得している人がだんだん減ってきているので、高齢化で減ってきているのだと思います。地域にちょっとでも貢献できればということで、(狩猟免許を)取ろうと」

ミツバチをきっかけに郵便局と地域との関係がより深まりました。そして次なるステップも描いています。

(岡山津島郵便局 野村和正局長)
「洋菓子屋、和菓子屋さんが、私たちが採った蜂蜜を利用して、商品開発をしてもらって、この地域じゃないと食べられないよって、そういったことができれば、すごい楽しいな」

採取したハチミツはまだ量が少なく販売には至っていませんが、郵便局の蜂蜜を使った特産品の登場が待たれます。目指すのは蜂蜜を通じた地域おこし。郵便事業だけではない新たな取り組みで地域貢献を目指しています。

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