瓦屋根の上を身軽に歩く女性。
山梨県笛吹市に住む瓦葺き職人の小林希未さん(39)です。
瓦葺き職人 小林希未さん:
「屋根の上に上って仕事しているときは楽しいなという気持ちが一番ある」
小林さんは大学卒業後、小学校の教員などを経て29歳の時に建設関連の企業に転職し、設計などのデスクワークに携わってきました。
こうした中、自分の手で建物をつくり上げたいという思いが強くなり2023年8月、笛吹市石和町の一ノ瀬瓦工業に入社し、瓦葺きの職人の道を歩み始めました。
一ノ瀬瓦工業 小林希未さん:
「日本の文化に触れるというか、伝統的な仕事をやっていきたいと前から思っていた。自分が最後、後悔がないようにやりたいことをやろうと思って応募した」
この日の現場は住宅の屋根瓦の設置です。
小林さんが任されたのは「押切」の作業。
屋根の幅に合わせてその場で瓦を切っていくのですが、ちょっと苦戦しています。屋根の上は勾配もあり足元が不安定。硬い瓦を切るのには力も必要です。
一ノ瀬瓦工業 小林希未さん:
「毎回やらせてもらう作業だが毎回難しい。男性と違って力がないので道具や材料が重かったり、身長が足りなかったりというのはある」
続いて、取り組んだのが小林さんの憧れという屋根の上辺=棟を仕上げる「棟積み」の工程です。建物の印象が決まるため最も重要なポイントです。
表情は真剣そのもの。
ベテランの技を目で盗みながら、無事に一仕事終えました。
先輩職人から見た小林さんの強みは…?
一ノ瀬瓦工業 飯島康司技術主任:
「この業界自体が男性主体の歴史があって、女性の目線で考えることがなかなかできなかった。特に瓦は建物というキャンバスの中に絵を描くことができるから、そういうところに彼女の感性が生かされてくれば、よりいい職人になっていくと思う」
小林さんも手ごたえを感じています。
一ノ瀬瓦工業 小林希未さん:
「(棟積みは)一番難しいところなので、自分もちょっとだけでも関われると満足感がある」
職人の仕事は現場だけではありません。
プロの知識を生かして屋根の修理やリフォームに相談に応じています。特に相談者が女性の場合はメリットがあります。
相談した人:
「物腰も柔らかいし、同性のほうがちょっと話しやすい」
そして、夕方5時半…
会社の定時より1時間早く退社します。
小林さんは2人の娘を育てる母親でもあります。育児との両立のため時短勤務をしていて、退社後は慌ただしく小学校と保育園に子どもたちを迎えに行きます。
一ノ瀬瓦工業 小林希未さん:
「子どもたちが一番大事だけど、職人として一人前になって未来に残るものをつくっていこうというのがあって、どっちかだけだと今の自分とは違う」
会社側は瓦葺きの現場で女性が活躍することへのある期待がありました。
一ノ瀬瓦工業 一ノ瀬康博社長:
「女性の力も借りながら、新しい価値観で業界を作っていく必要があると切に感じている。女性のチームを作るというのも一つの可能性になる」
小林さんも思いは同じです。
新米女性職人の夢は空高く広がります。
一ノ瀬瓦工業 小林希未さん:
「私のような者にもできるので、女性にも挑戦してほしい気持ちはあるし、建設業界が働きやすさを変えていっていると思うので若い人たちにも挑戦してほしい」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。