「核シェルター」…核兵器による攻撃から身を守るこの設備を、「自宅に設置したい」という人がいま全国で増えているそうなんです。なぜなのか…背景を愛知県豊橋市で取材しました。

愛知県豊橋市の住宅地。地中に張り巡らされた鉄筋コンクリートの骨組み。これは…

(芳賀土建 芳賀数正さん)
「こちらが、建設中の核シェルター」

地元の「芳賀土建(はがどけん)」が建設している「核シェルター」。核兵器による攻撃のほか、地震などの災害からも一時的に身を守ることができる空間です。

(芳賀さん)
「これが防爆扉。厚さ20センチのコンクリートの扉」

この分厚い「防爆扉」によって、爆発の衝撃にも耐えられるといいます。その先には…広々としたスペースが。約18畳の広さがあるメインの部屋です。

最大8人が2週間、避難生活を送る想定でつくられています。

完成イメージ
完成イメージ

さらに…

(芳賀さん)
「スイスから木箱に入れられて届いた」

スイスの企業から350万円で購入した空気清浄機。放射性物質もろ過することができ、シェルター内の空気汚染を防ぎます。

(芳賀さん)
「広島原爆で言うと(爆心地から)800~900メートル距離を取っていれば(シェルターの)中に入っていれば守られる」

日本ではあまりなじみのない核シェルターですが、なぜ、この豊橋の会社が建設を始めたのでしょうか?

(芳賀さん)
「国際情勢が不安定になってきているのを境に問い合わせがすごく増えた。お客さんの要望に応えるために自社でつくろうということで」

輸入でなく製造して販売へ…“核シェルターのモデルルーム”をつくった

(芳賀さん 2018年)
「こちらが、地下に埋設してある防災シェルター」

この会社は元々、小型の防災シェルターをアメリカから輸入し展示・販売していましたが…

北朝鮮の度重なるミサイル発射やロシアによるウクライナ侵攻。そして、相次ぐ自然災害を受けて問い合わせが急増。

(芳賀さん)
「1日で多いときは(問い合わせが)2~3件来る。来ない日はないような状況」

輸入品ではなく、自前でシェルターを建設して販売するため、まずはモデルルームをつくることにしたのです。

実は近年、こうしたシェルターをめぐっては動きが活発化しています。

おととしには、核シェルターの普及を促す自民党の「シェルター議員連盟」が発足。そしてことし3月、政府は台湾有事に備えて、沖縄を中心に全国でシェルター整備を進める方針を打ち出しました。

一方、核シェルターの人口カバー率は、住宅への設置が義務付けられているスイスが107%、アメリカも80%を上回っているのに対し、日本はわずか0.02%。

危機管理の専門家は、国際情勢がめまぐるしく変化する中、平時のうちから備えを考えることが大切だと訴えます。

(日本大学 危機管理学部 福田充教授)
「現代の新しい戦争の形は、ミサイル攻撃やドローン攻撃が一般的に。ヨーロッパや海外で起きている対岸の火事ではない。北朝鮮は世界で最も多くミサイルの発射訓練を日常的に行っている異常な環境がある。自分の身は自分で守る。余裕のある家庭には、自助的なアプローチが今後必要になってくる」

さて、豊橋市で建設中の「核シェルター」。このあと四方をコンクリートで覆い、8月末に完成する予定です。気になる値段は?

(芳賀さん)
「値段としては7000万円ぐらい」

建設費は地上の住宅部分も含めて7000万円前後の見通しですが、すでに購入を検討している人が複数いるとのこと。不安定な国際情勢、そして多発する自然災害から命を守るための備えと考えると、高くない買い物なのかもしれません。

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