国立の医療施設で起きた 長期間・多額の給与未払い

ハンセン病を患った人たちが入所する国立の療養所「沖縄愛楽園」で、2006年以降、看護師15人に対する給与の一部が未払いだったことが判明した。金額は合わせて1400万円あまりにのぼる。

当事者の看護師はRBCの取材に対して「人の生活がかかっている。謝って済む問題ではない」と怒りを露わにしたー

▽愛楽園の看護師①「私は145万円(が未払い)です」
▽愛楽園の看護師②「私は大体260万円未払金がありますっていうことでした。悪質極まりないですよね。すみませんで済むことではないですよね」

給与の一部が未払いだと知り、怒りをあらわにしたのは、現在も沖縄愛楽園で働いている3人の看護師。

沖縄愛楽園は、1938年に開園した、ハンセン病患者のための国立療養所だ。今年2月、看護師たちに園から突然「給与の金額に誤りがある」などと記載された書類が届いた。

▽愛楽園の看護師①
「私は2006年から「号俸(給与を決める基準)」が違っていた」

こう語る看護師は、沖縄愛楽園で働き始めた当初から、およそ18年にわたって給与の計算が間違っていたことが分かったという。さらにー

▽愛楽園の看護師①
「実は2016年に、(園が)給与監査で指摘されたんですけども、訂正されずに今まできていました、という報告を受けました」

園が国からの監査で給与計算の誤りを指摘されてから実に8年間、未払い分の支給はおろか、給与の是正すらされなかったという。

沖縄愛楽園によると、給与の一部が未払いとなっている看護師は15人で、金額は合わせて1400万円あまりに上る。園の担当者はRBCの取材に対して、次のようにコメントした。

給与支給ミスはなぜ長期間に及んだ? 信じ難い説明が…

▽愛楽園担当者
「職員採用時の担当者の認識不足により、本来より低い「号俸(給与を決める基準)」で決定が行われ、長期間にわたり給与が本来の支給額より低い金額で支給され、職員の方々に大変ご迷惑をおかけすることになりました。今回の件を踏まえて、チェック体制の強化をはかるなど、再発防止に向けて全力で取り組んでいくこととしております」


監査で指摘されてから、園側の対応までに時間がかかったことについてはー

「本来であれば速やかに事務処理を進めていくところが、転勤などがあって引き継ぎがうまくいかず、また、過去にさかのぼっての計算に時間がかかり、後回しにされてしまいました」

「(歴代担当者が)今どうにか乗り越えればいい」と思っていたのでは

▽愛楽園の看護師③・約250万円が未払い
「人の生活がかかっているというのを、そんなに重く見ていないのかな。転勤族だから、今どうにか乗り越えればいいや、というのがあるのかなと思った」

未払いとなっていた分の給与は、6月に一括で支給される予定だというが、そうなると別の問題も生じる。

▽愛楽園の看護師②
「未払いが250万円以上ありました。これを6月に振り込みます。こんなの誰が考えたって税金で損するってわかりますよね」

しわ寄せは「多額の課税」となって看護師の不利益に?

園の担当者によると、多額の給与が一括で支払われることにより、看護師たちは、正しい給与を受け取った場合に比べて、税金を多く払うことになる可能性が高くなる。

▽愛楽園の看護師①
「入所者のためを思って一生懸命仕事しているけど、そういうことがあったら一生懸命やっている人は、ばかを見てとっても悲しくなります」

▽愛楽園の看護師②
「長いこと働いていたら本当に(入所者の皆さんは)優しいんですよ。看護師に未払いがあってこんなことになっているって知ったら、一番心配するのは入所者さんですよ」

国立の医療施設で、長年に渡り、労働の対価が正しく支払われていなかったという信じ難い事実。愛楽園が看護師と誠実に向き合う姿勢が問われている。(取材:竹内伊吹、平田俊一)

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