「核兵器のない世界」に向けて国内外の有識者が話し合う国際賢人会議の第4回会合が21日、横浜市で始まった。世界各地で、核軍縮とは逆行する動きが見られる中、核廃絶に取り組む非政府組織(NGO)など3団体の代表者らは、改めて核兵器禁止条約の役割の重要性を訴えた。会合は22日も開かれる。

◆アメリカ議員も原爆正当化発言

 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が核使用の威嚇をしたり、北朝鮮が核開発を進めたりしているほか、今月には米上院議員らが広島・長崎への原爆投下を正当化する発言を繰り返すなど、核廃絶への道のりは険しさを増している。核拡散防止条約(NPT)体制の弱体化も懸念されている。

広島の原爆ドーム。2025年は原爆投下80年となる(資料写真)

 こうした状況下で開かれた21日の会合には、市民社会の代表として、核廃絶に取り組む団体「核兵器をなくす日本キャンペーン」などが出席。取材に応じた同団体事務局スタッフの浅野英男さんによると、「核兵器を違法と位置づける核兵器禁止条約は、核軍縮を明記したNPTと矛盾せず、補完的な関係にある」と説明し、核兵器の非人道性についても「しっかりメッセージを訴えるべきだ」と主張したという。

◆核抑止の現実とのバランス

 また、NGO「ピースボート」で国際コーディネーターを務める渡辺里香さんは、広島と長崎への原爆投下から来年で80年となることを踏まえ、核実験による被害者も含めた被爆者への支援充実を求めた。  浅野さんらによると、有識者からは「核兵器禁止条約の掲げる理想と、核抑止に頼る現実とのバランス」が難しいとの言及があった。日本政府が核廃絶を訴える一方で同条約に参加していないことへの指摘もあったという。  会合では上川陽子外相がビデオメッセージで「核軍縮の基礎であるNPT体制の重要性を強く訴えるべきだ」との考えを表明した。(中沢穣)

 核拡散防止条約(NPT) 核軍縮・核不拡散・原子力の平和利用を3本柱とし、1970年に発効。米国、ソ連(現・ロシア)、英国、フランス、中国の5カ国に核兵器保有を認める代わりに、核軍縮交渉に誠実に取り組むよう義務付けた。一方、他の締約国には核兵器の製造や取得を禁じた。おおむね5年に1度、再検討会議が開かれ、次回は2026年。日本政府は核兵器保有国と非保有国の双方が加わるNPTを重視する。



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