客からの理不尽な要求や言動「カスタマーハラスメント」、略して「カスハラ」が近年、全国で大きな問題となっています。

青森県内の企業や自治体でも被害を受けていて、その対応として名札のフルネーム表記を見直す動きが広がっています。

名前掲示『義務化』を撤廃 カスハラへの対応強化で「ある程度は安心」

青森市は2023年11月から、バスでのカスハラへの対応を強化しています。

白川 舞アナウンサー
「青森市営バスは現在、運転手の名前が掲示されていません」

公共バスで運転手の名前を車の中に掲示することが義務化されていましたが、2023年8月、国交省が撤廃しました。これを受け、市営バスも対応を見直したということです。

青森市交通部 東部営業所 澤頭健さん
「『(SNSで)晒すぞ』とか、『今から行くからな』とか、脅迫ではないでしょうけど、そういう話をされる方もいました。(今後は)『ネットに晒すぞ』と言われることはなくなったと思って、ある程度は安心して乗務していると思う」

こうしたカスハラへの対応は近年、社会的な問題となっています。厚労省も啓発動画を制作し、対応策などを解説しています。これとともに、2022年6月には全国の薬局で店員の名札の表記方法を変更。当初、フルネームを記載するとしていたものを名字だけでも可能とするとしました。

ドラッグストア・役所でも対応を強化

県内を中心にドラッグストアなどを運営する、丸大サクラヰ薬局も全店舗で名札を変えました。

ハッピードラッグ青森三内店の従業員
「『下の名前なんとかなの?』と名札を見て言われて、そこからいろいろ聞かれることもあったが、名字だけになったことで安心して接客しやすくもなったし、お客さんとの距離感もちょうどよくなった」

名札の変更は、弘前市役所も今年度から始めています。きっかけの一つとなったのは、2024年1月に発生した事件です。生活保護の担当課に月に1回ほど相談に来ていた男が、突然、刃物を出して「地獄に落としてやる」などと叫び、警察に現行犯逮捕されました。

このため、市は全ての職員の名札をひらがなで名字のみにしています。

弘前市人事課 鈴木健一朗総括主査
「市役所は、いろいろな方が訪れる場所になるので、職員が安心して働ける環境を整えるという意味では、名札表記の変更は有意義な面もある」

名札の変更 青森県内ではどれくらい進んでいる?

また、八戸市も今年度から一部の課で名札のフルネーム表記を見直しています。現在は試験的な取り組みとして、希望した部署単位で変更を認めていて、77ある課のうち2つの課が名字のみの表記にしています。

八戸市商工労働まちづくり部 大志民諭部長
「いろんな情報が世の中にありますので、その中で自分を守るのが適切かどうかはわからないですが、安心して働ける職場環境づくりの一助になっているのでは」

青森テレビの取材では県内10市のうち、名札の変更を一部でも始めているのは6つの市で、三沢・十和田・むつ・平川はフルネームの表記となっていました。こうした自治体のカスハラ対応を研究している大阪経済大学の山谷清秀講師は、今後、自治体側が積極的に対策を講じなければいけないと指摘します。

大阪経済大学 山谷清秀講師
「使用者側・雇用主が会社の中に向けて対策を作っていかなければいけない。それを義務化していくというのが今の大きな流れ。被害を受けた方が助かる・救済されるような手段も、今後の法制化で議論が進んでいくのでは」

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