日本の安全保障政策が、大きな分岐点を迎えています。政府は南西諸島に次々と基地を建設し、防衛体制の強化を図っています。有事の際、最前線に立たされる事になる若者たちは、何を語るのか、将来の指揮官を養成する海上自衛隊の幹部候補生学校を取材しました。

「大変だけど誰かがやらなければいけない」将来の指揮官たちの入学

広島県呉市。早朝、任務を終えた潜水艦の乗組員たちが帰ってくる。“戦艦大和”が建造されたドックは今も稼働している。

日本海軍の街として繁栄してきた“呉”は今も海上自衛隊の拠点だ。戦後高度成長を支えた巨大な製鉄所は去年、不況で閉鎖。広大な土地は基地になる公算が高い。ここにも“防衛力強化”の波が押し寄せているのだ。

呉基地の対岸、江田島にある海上自衛隊 幹部候補生学校。戦前は海軍兵学校として、卒業後、海軍の中枢を占める若者たちが学んだ。幹部候補生学校には防衛大学校と一般大学の卒業生が入学し、1年間の課程を終えて幹部になって行く。2024年は一般大卒が防衛大学校を大きく上回った。

3月29日、一般大卒業生が入校してきた。事前に髪を短くした学生が多いが、まだ長髪もいる。敬礼は初めてだ。おぼつかない。情報漏洩を防ぐ為に、まず携帯電話が“没収”された。

――どうですか携帯の無い生活は
一般大学卒業生
「不安ですね。家族と連絡が取れない」

自衛隊に入った動機については…

一般大学卒業生
「小学校からの夢だったので。イージス艦に乗れたらな、と思っています」
一般大学卒業生
「アニメなどを観てきて、海上自衛隊に憧れを持っていたので。(東日本大震災では)災害派遣で自衛隊の支援を受けてきて」
一般大学卒業生
「日本は海洋国家で、シーレーン(海上交通路)などもとても重要な拠点になると思うので、海上自衛官として当たり前の日常を守っていけるように」

世界各地で戦争が続いているが、有事の際の“覚悟”についてはこう話す。

一般大学卒業生
「命を落とす危険性があるのは当然、理解をしていますが、行く人間がいなければそれ以上に多くの命が落とすことになると思いますので」
一般大学卒業生
「『不安だ、不安だ』と特に母が言っていますが、父は『行って来い』という感じなので」
一般大学卒業生
「大変だけど誰かがやらなければいけないことなので、そこに尽力していけたらと思います」

4人部屋での寮生活が始まる「自分のやることをやりたい」

翌日、4年間の集団生活を終えた防大卒業生がやってきた

――もう集団生活には慣れているでしょう?

防衛大学校卒業生
「そうですね。4年間ずっと過ごしてきたので。これから一般大の子たちとうまくやっていけるか心配なところがあります。この数年間の中で一気に情勢が変わっているところもありますが、それでもここに来たからには、自分のやることをやりたいと思います」

――家族は何と言っていますか?
防衛大学校卒業生

「(家族は)『危険な事をしてほしくない』と言われます。命とかに関わる事態は多いと思うんですけど、そういうことも覚悟した上で、仕事はさせて頂きたい」

一般大生に比べて防大生は国際情勢に敏感だ。

防衛大学校卒業生
「対中国戦略とかは(防衛大学校の)授業でやっているので」
防衛大学校卒業生
「南西諸島、台湾有事が迫っているじゃないかと言われていたり、ロシア、ウクライナも未だに終わらずという感じで…」

――家族とはどう話している?
「基本応援はしてくれていますが、(家族は)『厳しかったらいつでもやめていいんじゃないか』と言ってくれていたり」

一般大学と防衛大学校卒業生2人ずつ、4人部屋での寮生活が始まった。

――防衛大学校と一緒になってどうですか?
一般大学卒業生

「もう色々と教えていただくことばかりで。なかなか一緒大変です」
一般大学卒業生
「運動してなかったので、全然。体力面で心配なことが多いな、という感じです」

1年後、彼らは現場に配属され、早いケースでは10数年で艦長や機長として部隊を指揮する。向かうのは周辺諸国の思惑が複雑に絡み合う緊迫の海域だ。

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