東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で2014年3月、カメルーン国籍の男性=当時(43)=が収容中に死亡したのは、体調不良を訴えたのに入管側が放置したためだとして、遺族が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は16日、国と弁護側双方の控訴を棄却し、国に160万円の支払いを命じた一審東京地裁の判決を支持した。「入管の注意義務違反の程度は軽いものとはいえない」として、一審に続いて入管庁の注意義務違反を認定した。

◆死亡との直接の因果関係は認めず

 判決によると、男性は13年10月、成田空港で入国を拒否され、11月に東日本入管に収容。糖尿病などをわずらい、14年3月に監視カメラのある部屋に移された。男性は、同月29日午後7時ごろから「アイムダイイング(私は死んでしまう)」などと苦しさを訴え、ベッドから落ちるなどしたが、見回りにきた職員はベッドに引き上げただけで、医者を呼ぶなどの措置を取らなかった。男性は翌朝、心肺停止状態で発見された。

控訴審判決後、監視カメラの映像を示し記者会見をする児玉晃一弁護士(左)ら=東京・霞が関の司法記者クラブで

 判決は「入管職員には遅くとも午後7時35分ごろの時点で救急搬送する義務があった」とした。ただ、その時点で救急搬送していれば高い確率で命が助かったかは不明として、入管の過失と死亡との直接の因果関係は認めなかった。

◆モニタールームの音声が切られていた

 原告の代理人の児玉晃一弁護士は「別室のモニタールームで音声が切られているなど、入管の体制不備が大きかった。死亡に対する入管の責任が認められなかったのは残念」と述べた。最高裁に上告するかは遺族と相談し決めるという。  出入国在留管理庁(入管庁)は「判決を精査して対応する」としている。(池尾伸一) 

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