京都府宇治市が進める『小中一貫校』の計画。その建設工事をめぐって、保護者から“憤りの声”も聞かれます。

少子化の影響で学校を統廃合 「小中一貫校」建設の影響が今の生徒たちに

 京都府宇治市の西部にある宇治市立西小倉中学校。全校生徒は約270人です。住宅街にあるこの小さな中学校を今年1月、不安そうに見つめる男性がいました。近所に住む荻野慎介さん(46)です。来年、長男がこの中学校に入学する予定なのですが、グラウンドが使えなくなるというのです。
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 (荻野慎介さん)「旧校舎を残したまま、グラウンドに新しい校舎が建設されることになっています。(息子が)入学するときにはもう工事が始まっているので、(グラウンドが)ない状態。小中一貫校ができることそのものは、新しい学校ができてとても楽しみだなと、子どもたちも喜んでいるとは思うんですけど…。不安ですね、なんとかしてほしいなと」

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 この地域には西小倉中学校のほか3つの小学校がありますが、少子化の影響で年々子どもの数が減少。そこで宇治市は、4校を統廃合して、中学校のグラウンドに「小中一貫校」を建てると決めました。
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 小中一貫校の完成イメージ図では、テニスコートに武道場、さらに人工芝が敷かれた中庭や広々した図書館と、まるで大学のような設備です。市内で2校目となる公立の小中一貫校で、約900人の子どもを迎え入れる予定です。しかし、工事が終了するまでの3年半、グラウンドが使えなくなるというのです。

 荻野さんが何よりも心配しているのは、野球をしている小学6年の長男・樹くん(11)のことです。

 (荻野慎介さん)「(息子は)野球はしたいと言ってますね。中1中2の間はグラウンドが使えない。グラウンドが使えないなら、西小倉中の野球部に入ってもな…ということは言っていますね」
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 中学生になっても野球を続けたいと話す樹くん。バッティングが大好きで、日課は毎日の素振りです。

 (荻野樹くん)「(中学校は)部員も今少ないし、練習場所も確保できていない状況。もうみんなほとんど部活ではやらないかなと思います」

工事中は近くの高校や小学校のグラウンドを使用

 『グラウンドが使えなくなる』このことを中学生はどう感じているのでしょうか。実際に聞いてみると…

 「グラウンドが使えなくなって移動すると思うんですけど、その移動時間で(体育などの)授業する時間が減ったりするのも嫌やなと思います」
 「行事とか勉強ができなくなってくる部分があるかもしれないのがこわいです。悲しいし、不安が一番大きいです」

 工事中は近くの高校や小学校のグラウンドを使うため、授業や部活の時間が減るのではと心配します。
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 では、実際に中学校と高校のグラウンドはどれほど離れているのか。取材班が歩いてみました。中学校のすぐ近くにある信号のない横断歩道を2か所わたり、用水路沿いを歩くこと約400m。高校に到着しました。結果、約5分半かかりました。

“工事の音”も学校生活に影響?「授業が途切れることもある」

 工事が始まって2か月が経った今年4月上旬。中学校を訪れると、着々と工事が進められていました。そして、新たな問題も。

 (記者リポート)「重機の音がよく聞こえます」

 工事現場と校舎との距離は、最も近いところでわずか2mしか離れていません。授業への影響はないのでしょうか。取材班が測定器を使って測ってみました。
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 (記者リポート)「音の大きさが75デシベルを超えました」

 75デシベルとはどれほどの大きさなのか。教室の様子を再現してみたところ、机のすぐ横でシュレッダーをかけた時、75デシベルを計測しました。中学生たちに工事の音について聞くと…

 「結構気になります。そのせいで授業が途切れることもあります」
 「(工事現場から)人の声も聞こえる。こーしろ、あーしろ、みたいな。結構大声で」

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