全国各地でインバウンドが好調に推移する中、急速に増えているのが外国人観光客の忘れ物です。宿泊施設は忘れ物を3か月保管する義務があり、持ち主とのやり取りや配送など様々な手間とリスクが発生します。こうした問題を解決しようと、すべての手続きを無料で代行する新たなサービスがいま注目されています。

“忘れ物”諦める外国人観光客も

5月上旬、昼前のJR別府駅前では、多くの外国人観光客が行き交い、観光案内所が混雑していました。別府観光を楽しむ人達に海外旅行で経験した「忘れ物」のエピソードを聞いてみました。

JR別府駅前

(アメリカ人)「何を忘れたのかというと電動歯ブラシですね。外国にいるときは忘れ物を探すのは本当に難しいです」

(イギリス人)「ドバイで2回もタクシーに携帯電話を忘れて急いで取りに行きました」

(フランス人)「時計を忘れたことがあります。忘れ物をしたらホテルに電話して送ってもらえるようにお願いします」

日本の旅館業法では、宿泊施設は忘れ物を3か月保管する義務がありますが、持ち主側から問い合わせるのが通例です。さらに、警察に届けられることもあり、日本のルールに不慣れな外国人観光客にとっては手続きが難しいため、諦めてしまうことも多いそうです。

宿泊施設の負担を9割削減

大分市に配送事務所を置く「Lost Item Delivery」。元ホテルマンで、輸出入事業を手掛ける吉永陽介社長が2020年、『忘れ物海外配送ワスラック』という新たなサービスを打ち出しました。

吉永陽介社長

吉永陽介社長:
「ゲストと荷物の配送やホテルとのやり取りなどを代行しています。月にすると400~500件くらいですね」

このサービスは、持ち主から宿泊施設に忘れ物の問い合わせがあった場合、すべての手続きを代行する無料サービスです。多言語のやり取りを引き受けることで、施設側の負担を9割削減。忘れ物を送り返す際は、重量に応じて持ち主から配送手数料を受け取る仕組みです。

全国で急激に普及していて、JR九州ホテルズや三井住友不動産ホテルなど契約施設は300以上、部屋数に換算すると4万室に上っています。

吉永陽介社長:
「問い合わせは帽子やメガネ、イヤリングなど身につけるものがほとんです。貴金属は高額なものもありましたし、現金で87万円もあります。パスポートもありましたね、どうやって帰ったんですかね(笑)」

地方の隅々まで旅行してほしい

この事業の大きな強みは、国ごとの規定により輸入出できない“禁制品”対策です。「ワスラック」では、忘れ物が禁制品に該当するかどうか確認します。また、ワイヤレスイヤホンの充電ケースなど航空貨物として運べない荷物も、専門の事業者と連携して持ち主に届けるノウハウを確立しました。

この日、別府市にあるホテル「アマネリゾート」から香港の観光客が忘れたワイヤレスイヤホンを受け取りました。梱包される忘れ物にはおもてなしの心を込めた折り鶴が添えられます。

(アマネリゾートのフロントデスク)「忙しいけど、お客さまの大事なものをきちんと送りたいので一番助かります」

吉永社長は帰国した後のアフターフォローでも外国人観光客に満足してもらうことで、訪日旅行の需要がさらに高まっていくと信じています。

吉永陽介社長:
「『本当に日本が大好きです。ありがとうございました』とラインが来ています。おもてなし100%でやっています。弊社はゲストとすごくフレンドリーになるのが特徴で、東京で1週間、京都で2週間滞在するのでいい宿を紹介してほしいと連絡が来る。ゴールデンルート以外のあらゆる地方に隅々まで外国人の方が旅行してほしい、その一翼を担うお手伝いを目指しています」

宿泊施設が丸投げできる新サービス。さらに拡大しそうです。

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