日本人の食に欠かせない「米」。その「米」の消費拡大を目指して、倉敷市(岡山県)があるサービスを始めました。市民のニーズも高く、提供される期間の延長も決まりました。果たしてそのサービスとは?

市役所に現れた「米粉製粉所」

倉敷市役所に設置されているのは。。。【画像①】は一見ATMのようですが、その正体は、何と「米粉製粉所」です。

【画像①】まるでATM出張所のような「米粉製粉所」

去年10月、倉敷市は住民票などを自動交付していた施設を改装して、「市民が持ち込んだ米を無料で米粉に製粉するサービス」を開始。先月末までに1056件、2600キロ以上を製粉しました。

当初、設置は3月末までの予定でしたが、ニーズの高まりを受けて期間を延長。倉敷市役所に米を持参すれば、後日、製粉された米粉を無料で受け取ることができます。このサービス、市民にとって何が魅力なのでしょうか?

(利用者)
「お店で買ったら結構米粉は高いでしょ。家にあるお米でできるから」

(利用者)
「真備に住んでるんですけど、被災した時に毎年お米をいただくようになって、それが去年のが残っててちょうどいいなと思って」

「米粉」に力を入れ始めた倉敷市 

倉敷市がいま市を挙げて取り組んでいるのが、この「米粉」の普及です。パンフレットを作成して小中学校に配り、子供たちへの啓発を行ったほか、ホームページも立ち上げました。米粉を使った商品を販売するイベントも開催しています。

(倉敷市農林水産課 武和幸さん)
「小麦粉の代替原料として米粉を普及させていこうと。それに伴って倉敷市のお米の普及拡大を狙いとしております」

米粉のニーズ高まる ここにきてなぜ?

ここに来て、全国的に米粉のニーズが高まってきているといいます。吉備中央町にある製粉会社「シーワン」です。岡山県内で栽培された米粉用米を中心に商品を生産しています。

シーワンによりますと、かつて2010年頃に米粉のブームが訪れたと言います。当時は主にパンの原材料の小麦の代わりとして使用されていました。しかし、そのブームも長くは続かなかったということです。

(シーワン米粉事業部 田中満部長)
「米粉を入れることでどうしても『製パンした時の原価』ですよね。そこが跳ね上がってしまったり、あとは膨らみにくいとかですね。そういった作り手の不便性のところで問題があったのかなと思います」

しかしその後、小麦アレルギーの人でも食べられることや、アミノ酸などの栄養がバランスよく含まれている部分などが注目され、再びニーズが高まってきたのです。

倉敷市上東にある就労継続支援事業所が運営するベーカリーです。倉敷市が開催した米粉のイベントにも参加したこの店では、おととしから米粉を使った商品の販売を始めました。

(クラシス 下津愛理さん)
「腹持ちがよくて、あとはもちもちした食感のケーキになります。健康志向のために、米粉を主とした焼き菓子とかパンを食べられている方が多いので」

米粉の需要増加「円安も追い風に」

さらに追い風となっているのが、世界情勢や円安による輸入小麦価格の上昇です。小麦の政府売り渡し価格が2019年は1トンあたり約5万円だったのに対し、2022年には7万2千円あまりまで上がりました。

小麦価格が高騰した時期には米粉との価格差が小さくなり、小麦の代用品として注目されたのです。農林水産省のデータでは今後も米粉用米の需要と供給が伸びると予想されていて、製粉会社も需要拡大を見込んでいます。

(シーワン米粉事業部 田中満部長)
「今まで使いにくかったっていう米の品種をいかに使いやすくするかっていうことで、需要はかなり伸ばすことができるかなって思ってます」

生産農家も「苦境」の中、「米粉需要増加に期待」

倉敷市の米粉普及の取組みは、先月の市長選挙で再選した伊東市長の公約にも掲げられています。目標は、米粉利用の普及促進による地元産米の消費拡大や地産地消の推進です。

倉敷市真備地区の約9ヘクタールの田んぼで米作りを行う、小林英樹さんです。現在、円安による肥料や燃料の高騰など厳しい経営が続く中、小林さんは新たな消費につなればと米粉普及の取組に期待を寄せます。

(米生産者 小林英樹さん)
「生産量をもっと増やせたり、米の単価が増えれば色々な面で助かりますし、そういういろんな米の利用をどんどん増やしていただけたら、農家のほうも助かると思います」

(倉敷市農林水産課 武和幸さん)
「米粉の製粉事業とかですね、こういったものをたくさんの方にご利用いただいて米粉をたくさん使っていただく、そういう中で倉敷市産のお米をたくさん食べていただく、消費していただくことで地産地消を推進していきたいと思っております」

地域の水田を守り、食料自給率の向上にもつながる米粉の普及に向け、倉敷市の取組みが続きます。

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