性感染症・梅毒が急増しています。「バラ疹」と呼ばれる痛みのない湿疹が出て消えていくー。しかし放置すれば体内で病変が進み取り返しがつかない事態になると医師は警鐘を鳴らします。性風俗店で働き、梅毒に感染した女性は最新の「筋肉注射」で治療しましたが、在庫切れのクリニックもあるといいます。当事者たちを取材しました。

性風俗店で働く、関東在住の20代女性は2023年8月に梅毒に感染したことがわかりました。

梅毒に感染した20代女性:
「手のひらにバラ疹って言われてる。凹凸のない湿疹みたいなのができるんですよ。大体足の裏とか手のひらとかにできやすいんですけど、それが手から手首らへんにかけて出てきちゃって。それと、口の中に治らない口内炎みたいなものができていたんです。1ヶ月以上経ってもずっとあるみたいな…。ただ、痛くもかゆくも全くなくて。もう確実だと思って、検査したらやっぱりプラス(陽性)だったって感じです」

毎月、定期検査を受けていた女性ですが梅毒が分かったときはショックだったといいます。

梅毒に感染した20代女性:
「やっぱりショックでしたね。結構自分は気を遣っていた方なんでお店の中でも。検査しない人が多かったんですけど、私は週2、3回とかの出勤だったんで、その中でかかっちゃったのはショックだったなっていうのはありますね」

「急増する梅毒」10年で女性患者が23倍

梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染することで引き起こされる病気です。
主に性交渉や性交渉と類似する口腔性交、肛門性交を通して、皮膚や粘膜の小さな傷口から細菌が侵入し感染します。キスで感染する可能性もあるのです。

日本では1990年代以降の患者数は年間1000人を下回っていましたが、2013年は1200人を超え、その後、年々増加。そして2023年、全国の感染者数が1万4906人と過去最多となりました。

その内訳は、10年間で男性はおよそ10倍、女性はおよそ23倍を記録。特に20代の女性や、20代から50代の男性で感染者数の増加が目立っています。

感染者が増えているのは東京や大阪といった大都市だけではありません。富山県内でも2011年以降に増加傾向が続いていて、2021年には過去最多の48例が報告されました。これについて富山県衛生研究所の大石和徳所長は「性の感染症予防」が軽視されていると警鐘を鳴らします。

富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「最初は、都心だったんです。東京都内とか、主要な都市でそして大阪とかですね、そういったところで梅毒が増えてきたんですが、その後はずっと地方に入り込んでしまい、それでじわじわと増えてきています。いわゆるセーフセックスって言われているコンドームの着用というか、簡単なことができていない人たちが一定数いて、それで広がってるということだと思うんですね。性の感染症予防というのが本当に軽視されがちだなというふう感じますね。いい加減止めないと、大変なことになるという危機意識を持っていただきたい」

取材した女性の周りでも、最近梅毒に感染したという人が多かったといいます。

梅毒に感染した20代女性:
「自分の勤めてたお店は、毎月3人は出ていましたね。基本的に、罹るとみんな一気にいなくなるというか。治療していましたみたいな日記をSNSであげている方とかもいるんで、周りでも最近になってやっぱり多いなっていうのは感じています」

また女性自身もパートナーにうつした可能性があったと話します。

梅毒に感染した20代女性:
「彼氏が突如、あそこが痛いみたいなことを言い出して、病院に行ってもらったら梅毒の履歴が残っていたみたいなことを言ってて、自分がもしかしたら移しちゃった可能性の方が高いかもしれない」

「梅毒は過去の病気だと…」

富山県内のクリニックでもこれまではなかった梅毒の診察が増えたといいます。女性クリニックWe!Toyamaの産婦人科医、鮫島梓さんに話を伺いました。

女性クリニックWe!Toyama鮫島梓医師:
「一番の地方に広まったきっかけ、私自身はコロナによって風俗産業を都会でやっていた人たちが都会で営業ができないので、地方に移っていったというのも広まった要因かなと思っています。ちょっと前までは梅毒は過去の病気というのが日本での考え方で、私達も見る機会がなかったので、梅毒の患者さんが来ても、それが梅毒だっていうふうに疑わなかったんです。見過ごされてっていうので、感染してからしばらく経過してしまってその間に感染も広まってしまって」

具体的な症状はー

感染から1年以内の「早期梅毒」と呼ばれる時期は、原因となる細菌が入り込んだ場所を中心に腫れやしこりが現れることが多いといいます。その後、手や足など全身にバラの花のようにみえる「バラ疹」が出るなどさまざまな症状が出ます。

鮫島梓医師:
「一番最初は口腔内や外陰部に結節みたいな塊ですよね。赤く腫れ上がったりとか、潰瘍みたいになったりとか、そういった症状が出ることがあります。それが早期の初期の症状としてあって、そこから1ヶ月経過してくると、今度は全身的に皮膚症状、例えば、手のひらとかですよね。あとは足とかにもポツポツとした発疹のようなものが出ることがありますね。ただこの病気の怖いところは初期のステージは数週間から数ヶ月で症状が消えていくことと、症状が出ても痛みやかゆみなどがないことです。何か出てるけど…という感じで、でも消えていった大丈夫というふうに終わって」

症状が出ても痛みを感じることが少なく、気が付かないことが多いといいます。しかし、治療せずに放置するとー。

鮫島梓医師:
「全身的に広まってしまって、神経や血管、そういったところに病変が進んでしまうと、もう治療しても難しく、不可逆的な、一生影響を与えるような変化っていうのが出ちゃうことがあります。痴呆みたいな状態や手足が動かせなくなったり、勝手に動いてしまったりとか、痺れたり。かなり残酷な状況になってしまうことがあります。
大きな血管とか脳にもいってしまうと、ご自身で自立して生きていくっていうのは難しくなりますし、それこそ命に関わるっていうふうな状態」

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