大阪府高槻市の小さな8坪の「団地酒蔵」で酒造りをする足立洋二さん(33)。団地でお酒が造られているとはどういうことなのでしょうか?

夫婦二人三脚で営む大阪・高槻の「団地酒蔵」

 38度まで冷ました米に麹菌を振り、お酒の原料となる米麹を作ります。一人黙々と作業をするのは足立洋二さん(33)です。酒蔵があるのは大阪・高槻市の富田団地。総戸数2600戸を超える大規模団地の一角に、酒蔵「足立農醸」はあります。広さはわずか8坪。容量550リットルのタンクが2つあり、年間8000リットルのお酒を造ることができます。

 (足立洋二さん)「ここで蒸して、入れて、搾って、詰める」


 併設されたバーでは甘酒や麹を使った一品料理を提供。妻の緑さん(36)と二人三脚で営む小さな団地酒蔵です。

きっかけはアメリカ留学 独立の際に選んだ『団地』

 2013年、水泳に打ち込むためにアメリカ・テキサスに留学していた足立さん。当時アルバイトをしていた和食レストランで日本酒の可能性を感じたといいます。

 (足立洋二さん)「テキサスで初めて日本酒の飲み比べをして、反応がすごく良かったんですよね。これが本当に僕の中でやりがいだった。今後すごいことになっていくぞって直感でわかったので、それだったらもうちょっと勉強しないといけないなというので日本に帰ってきた」

 2016年に帰国した足立さん。青森と兵庫の酒蔵で6年間修業を積みました。独立を決意して地元・大阪で酒蔵を造る場所を探していたところ、偶然見つけたのが富田団地でした。

 (足立洋二さん)「高槻のこの団地のテナントがウェブサイトの一番上に出てきたんですよ。これおもしろいなって思って。団地?ってなって見に行かせてもらった」

 家賃は1か月8万7000円。初期費用も抑えられるということで内覧したその日に契約を決めたといいます。家も富田団地に引っ越しました。酒造りにどっぷりと浸かる日々が始まりました。

キウイを使って酒造りへ 個性を出す以外の理由も


 去年10月。この日、足立さんがやってきたのは香川県善通寺市にあるキウイ農園でした。大阪から移住した深井稔さんと山田唯可さんが営んでいます。足立さんが目をつけたのは香緑という品種のキウイ。

 (深井稔さん)「こってりしている感じ。さっぱり系よりちょっと濃い感じで特徴的なので、加工しても個性が出るかなという印象やなと」
 (足立洋二さん)「食べてめちゃくちゃおいしかった。正直酒に使うのはもったいないなくらいの」

 なんとこのキウイをお酒に入れるといいます。

 (足立洋二さん)「キウイ感な、キウイ感出さな」
 (山田唯可さん)「でも難しいですよね、香りがなかなか出てこないですよね」
 (足立洋二さん)「キウイの香りがな、ちょっと勉強せなあかんな。どうやったら出せるか」

 酒造りにキウイを使う理由。それは味わいに個性を出すためだけではなく別の理由もあるといいます

日本酒製造の新規参入は困難…そこで“クラフトサケ”に挑戦

 実は日本酒製造への新規参入は原則認められていません。しかし日本酒を作る過程で果物やハーブなどの副原料を加えると、法律上は日本酒ではなく「その他の醸造酒」に分類されるので、新たに醸造免許を取得することができるのです。


 (足立洋二さん)「そういう参入の仕方があるんやっていうのを全く知らなかったので、そこで自分の中で何か火がともった瞬間というか」

 足立さんはクラフトビールならぬキウイを使った“クラフトサケ”造りに挑むことにしました。

 4月11日、深井さんと山田さんからキウイが届きました。

 (足立洋二さん)「これを20kgひたすら皮をむいていきたい思います」

 約3時間…

 (足立洋二さん)「あー手が痛い。贅沢な酒ですよ。こんなにいっぱいキウイを使って。入れるわよ」

 キウイの甘みや酸味を残すために、酒を絞る直前のもろみへ、数回に分けてキウイを入れていきます。

 (足立洋二さん)「あとはキウイっぽくなってくれるかですね」

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