難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(48)が、重度訪問介護(重訪)サービスの時間を不当に短く決めたことは違法だとし、埼玉県吉川市に決定の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、さいたま地裁(田中秀幸裁判長)は8日、決定の取り消しと約133万円の賠償を命じた。原告側弁護団によると、同種訴訟で損害賠償が認められたのは初めてとみられる。

◆3人子育て中の妻に「1日8〜11時間介護できる」と吉川市

 男性は2019年以降、他のサービスと合わせて24時間介護を受けるため、市に1日当たり約22時間の重訪の支給を申請したが、市は妻(当時)が1日当たり8〜11時間介護できるなどとしてその分を差し引き、約13時間と決定した。

さいたま地裁(資料写真)

 田中裁判長は判決理由で、妻が夫の仕事を一部引き受けながら3人の子どもの世話をしていたことを指摘。子育て負担が「非常に大きいことは社会の一般常識」であり、市の決定は「社会通念上妥当性を欠き、裁量権の範囲を超えている」として違法と結論づけた。  市の決定を取り消した上で、19時間超のサービス給付と、男性が自己負担した介護サービス費などの支払いを命じた。  さらに、19年4月に男性宅を調査に訪れた同市職員が、男性が文字盤を使って意思表示をしている際に「時間稼ぎですか」と発言したことについても、「強度の誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)的な発言」として違法性を認め、慰謝料5万円の支払いを命じた。(足立優作、大久保謙司) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。