被差別部落の情報を網羅的に掲載したウェブサイトで、自宅が写り込んだ写真などが載った記事を投稿され、「差別されない権利」を侵害されたとして、大阪府内の男性が記事の削除を求めた仮処分の申し立てで、大阪地裁は申し立てを認め、運営側に記事の削除を命じました。

 神奈川県川崎市の出版社の代表を務める男性は、自らが運営する自社サイトで、地名や写真、“解説文”など、全国の被差別部落の情報を載せた記事を多数投稿。地裁の決定文によると、去年10月末時点で300か所以上が掲載されています。

 このウェブサイト中の記事で、自宅が写り込んだ写真を載せられるなどした70代男性(大阪府在住)は、「被差別部落を特定・暴露し、人権侵害の意図も強固。憲法が保障している『差別されない権利』を侵害している」として、去年11月、当該記事の削除を命じるよう、大阪地裁に仮処分命令を申し立てていました。

 これに対し運営男性側は、「部落が差別を受けているとは考えていないし、そうした主張もしていない」「当該記事に個人を貶めるような表現はなく、記事によって差別を受け不利益を被った事実は確認されていないはず」として、申し立てを退けるよう求めていました。

 大阪地裁(井上直哉裁判長)は5月1日付けの決定で、「現在もなおその地域の居住者だというだけで、否定的評価をするという誤った認識が根強く残っていることを踏まえると、当該記事は差別を助長するものだ」とした上で、「差別を受けることなく平穏な生活を送るという、人格的利益を侵害している」と認定。

 運営男性に対し、当該記事の削除を命じました。

 この運営男性をめぐっては、全国の被差別部落の地名リストを載せた書籍の出版などを計画し、被差別部落出身者ら200人あまりなどが、出版差し止めなどを求め東京で提訴。1審・2審ともに、出版差し止め(一部の県のリストは除く)や損害賠償を命じる判決が出ています。

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