山口県下関市で、米粉を使ったパンを製造販売する店が人気を呼んでいます。追求しているのは、おいしさだけではありません。小麦アレルギーの人にもおいしいパンを楽しんでほしいというねらいの先には、違いを認め合う世の中への思いがありました。
色とりどりのパンが焼き上がりました。どれもおいしそうですが、じつは材料が少し違っています。米粉・・・米をひいて作った粉でつくった「米粉パン」です。
KOMEKO88 原田陽子店長
「米粉なので、小麦粉と違ってお米本来の甘みを感じられるっていうのをお客様よく言ってくださる。あと食感ですね。もちっと、ふんわりもちっとしたもちもちとした食感がみなさまから愛されてると思います」
天然素材で子どもに安心なパンを
下関市赤間町のKOMEKO88は、去年7月にオープンしました。販売は予約制で、看板商品は食パンです。人気のベーグルはヨモギやチョコ、小豆など新しい味で、商品の幅を広げています。材料は砂糖や塩、水に至るまで天然素材を追求しています。「自分の子どもに安心してたべさせられるものを」という発想からでした。
KOMEKO88 原田修平さん
「自分は食に対して無頓着だったんですけど、勉強して、自分自身のアレルギーも改善することができたので、食を変えることによって、子どもも健康面で元気に育つように食に気をつけていたというのが最初のきっかけですね」
人気上昇、根強いファンも
原田陽子店長
「こんにちは~お待ちしておりました、ご用意できております」
SNSや口コミなどで人気が徐々に広まっていて、根強いファンも獲得しています。
母親と娘2人(下関市内から)
「大好き、大好きですね、私も主人も好きですし、子どもたちも喜んで食べますね、もう、おいしい、なんと言ってもおいしいって感じです」
この家族は、北九州市から訪れました。この店を選んだ理由に米粉パンの味わいのほか、添加物を使わないこと、さらにアレルギーへ配慮されている点もあると言います。
家族(北九州から)
「小麦はとりすぎると、ちょっと体調がよくなかったり、アレルギーがちょっと…米粉はそういうのがないので」
厚生労働省によりると、正確な人数は把握されていないものの、100人に1人から2人に何らかの食物アレルギーがあるとみられています。中でも小麦は、アレルギーの重篤な症状をおこす恐れもあることから、卵や乳製品と並んで表示義務が課されています。
学校に米粉パンを持参する小学生
山口市に住む小学6年生の原田雄基くんは、下関から米粉パンを取り寄せて食べています。学校で食べるためです。
原田雄基くん
「みんなパン食べてるし、自分もみんなと同じパンを食べたい…」
雄基くんは、赤ちゃんの時から、小麦以外にも卵などさまざまな食物アレルギーと闘ってきました。給食は、アレルギーの原因となる食材を取り除いた「除去食」が提供されますが、みんなと一緒に同じものを食べられないことで寂しい思いをしてきました。校外の活動など給食が準備できないときは、自分で食事を用意しなければならないので、みんなと一緒の食事をとることが難しかったといいます。
母親・原田佳代さん
「かなり卵の割合が多いと思うんです、から揚げとか揚げ物のつなぎ、卵焼き、マヨネーズとなると市販のお弁当ってちょっとリスクがあるので」
冷凍で届けられる米粉パンは、電子レンジで解凍します。冷めてしまうと硬くなってしまう米粉パンをおいしい状態に保つため、保温ができる容器に入れて学校に持って行きます。同級生のことばも、徐々にかわってきました。
佳代さん
「周りの子どもさんたちも成長と共にアレルギーの認識をすごい深めてくれて『食べられないからつらいよね』とかいう声をかけてくださるみたいなんですよね。きょうは卵入ってるから原田くんのやつはこっちに運ばんといけんね、とかそういうことを周りも一緒に認識してくれてるのはすごくありがたいです」
違いを認め合う世の中に
家庭の中の常識に閉じこもることなく、きびしくとも違いを違いとしてほかの人と向き合うことが、雄基くんの成長につながると佳代さんは考えています。送られてくるパンはその助けになっています。
雄基くん
「ぼくはパンが、みんなと一緒のが食べられないけどほかにもクラスの人とかがみんなと一緒のことができないとかがあればちゃんとわかってあげられる人になりたい」
原田修平さん自身も子どもの頃、病気による食事制限で周りと同じものが食べられませんでした。その経験から、雄基くんのためにと給食のパンに似せたものを作っています。
原田修平さん
「ほかの子とおんなじものをたべたい、とくにほかの子と一緒がいいって言う年代でもあると思いますので、その気持ちはよくわかりますので、みんなと一緒に食べれるって言う、そこに貢献できてるって言うのは自分としてもうれしいかなあって」
食は人をつくるもの。ひとりでも多くの人が、自分にあったものを食べられる--。その機会が増えることが幸せにつながると信じて、きょうもパンを焼いています。
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