シリーズでお伝えしているSDGsプロジェクト「地球を笑顔にするWEEK」の3回目です。

間伐された木から作った糸を使ったジャケットが、このほど完成しました。
間伐材の新しい使い方、さらに地球にやさしい使い方を追求して誕生した「木の糸」を紹介します。


淡いベージュ色のジャケットにワイシャツ。


これらの原料となっているのが…

「これが木の糸の原料になります」

大量の木のチップ?!

長野県根羽村森林組合ではおよそ3年前から、間伐されたスギの木を天然繊維の「木の糸」に生まれ変わらせる取り組みを行っています。


根羽村森林組合 岩見義明(いわみ・よしあき)さん:
「木をうまく使おうというところから考えがいろいろとあって」

面積の92%を森林が占めている根羽村。

古くから林業が盛んでした。

1年間に間伐されるスギの木はおよそ2万本。

その4割近くが木材チップになり、バイオマス発電に使用されています。

森林組合が「木そのものを生かしながら森のためになる活動を」と考えていたところ、出会ったのが、あるタオルです。

根羽村森林組合 岩見義明さん:
「徳島県上勝町(かみかつちょう)というところで先行してこれを作っていて、スギがこんなふうになるんだよと教えていただいて、僕らも驚いて」

これを機に、根羽村も県外の工場などと提携して「木の糸」の製造に挑戦。

根羽村森林組合 岩見義明さん:
「セルロースの工場ではこれ(チップ)に、十分な水を含ませて薬剤が入りやすくします。窯の中でそれを蒸していくという工法でセルロースを抽出しています」

その後、繊維の主成分であるセルロースから作ったパルプを均一に伸ばして和紙に。

1ミリから4ミリほどに細かく裁断して巻きつけたら木の糸の完成です。


木の糸は紫外線に強く丈夫で、ほかの繊維に比べ、毛羽立ちが少ないのが特徴。

これらを使って、ワイシャツやジャケットを製作しました。

根羽村森林組合 岩見義明さん:
「ボタンは飯綱町のりんごレザーを使って、この素材は根羽のスギを使っている。ブランド名は『NAGANO』なんです」

4月にジャケットの完成を阿部知事に報告し、実際に試着してもらいました。

阿部知事:
「とてもフィットする。いろんな所で着たい」

知事の評価は上々です。


ジャケットはメンズのLサイズで、税抜き7万8,000円。

少々お値段は張りますが、その中には「森のためになる」あるものが含まれているのです。

岩見さん:
「商品の値段の中に実は少しだけ『山に戻そう』という還元の費用を入れさせていただいています。そのお金で植林をしたり、森林整備をしていく」

間伐された木で洋服を作って売るだけではなく、その利益の一部を使って森林を守る活動をすることで、持続可能な森林づくりにつなげるというサイクルです。

さらに、洋服を長く使い続けることで、地球温暖化を食い止める活動にもつながるといいます。


根羽村森林組合 岩見義明さん:
「木の成分をほとんど失わず製品にしている。木の中には炭素が固定されています。皆さんに使っていただくことは、知らないうちに脱炭素の活動をやることになる」

このような取り組みが評価され、「木の糸」は2025年に開催される「大阪・関西万博」の医療スタッフのユニフォームの素材として採用されました。

根羽村森林組合 岩見義明さん:
「物を作ってしまうだけではなくて、どういうふうにサイクルできるのか、万博が理解の場になればと思っています」

万博をきっかけに国内だけでなく世界中へ。

森林や地球環境の保全につながるサステナブルな天然繊維の一つとして、今後も注目を集めそうです。

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