北九州市のファストフード店で起きた中学生2人殺傷事件。中島咲彩さん(15)が亡くなり、一緒にいた同級生の男子生徒は深い傷を負いました。発生6日目の12月19日、警察は現場近くに住む無職の平原政徳容疑者(43)を男子生徒に対する殺人未遂の疑いで逮捕しました。
容疑者はなぜ中学生2人を襲ったのか?逮捕に至るまで6日を要した理由とは?犯罪ジャーナリスト小川泰平氏が解説しました。
◎小川泰平:元神奈川県警刑事 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決
小川氏はまず、事件の印象について「通り魔的な犯行」と言えるのではないか、としながら「非常に違和感のある」と指摘します。平原容疑者がサンダル履きであったことについて、凶器を用意していた割に、サンダルを履いて来ていたことは「逃げる意識があったのかどうか」と印象を述べました。
容疑者が一方的に知る「片識」の可能性も
――警察によりますと、容疑者はワンボックスカーで店舗の駐車場に入り、十数分後に入店しています。営業中の店、明るくて目立つ場所での犯行意図はどのあたりにあるのでしょうか。
小川氏は、容疑者の行動について「この2人を狙った可能性もありますし、この2人ではなく、若い中高生などを狙った可能性もある」としました。今回車を止めて十数分経っているので、男女の中学生が店内に入るのを見届けた可能性はある、としました。
そして「入店してから全く無駄な動きがない。躊躇なく中学生2人のところに行って、何も言葉を発することなく、非常に強い力で、深く刺した」と指摘。その時間が十数秒とも入われている。
被害者の男子生徒は刺した人を「全然知らない人」と話していますが、容疑者がもしこの中学生2人を狙ったとすれば、被害者は知らないが、容疑者側が一方的に認識していた「片識(かたしき)」の可能性もあるということです。
また、容疑者が中島さんと男子生徒の2人ではなく、広く「若者・中学生」に対して恨みがあった可能性についても小川氏は言及しました。
(小川泰平氏)「中学生・高校生なら誰でもよかった、みたいな犯行も考えられるのかなと思います。ファストフード店の見解として、『店とのトラブルはなかった』という話ですが、店側はそうでも、容疑者から見れば、何も文句は言ってないけども、心の中で何かトラブルがあった、『例えば、店がいつも騒がしかった』など一方的な考えがあった可能性もあります。中学生や高校生がこのファストフード店をよく利用していて、特に土曜・日曜は利用していて、このお二人でなく、そういったのを狙った可能性も」
「前足(まえあし)と言いますが、現場に来るまでの間に、他の飲食店や人が多いところで何か下見のようなことがあったのか、それともこのファストフード店なのか、ということも今後捜査していくと思われます」
逮捕に至るまで「犯人情報」がほとんど世に出なかったのはナゼ?
事件から6日目の逮捕となりました。捜査は百数十人体制だったといいます。逮捕の決め手は100以上の防犯カメラとドライブレコーダーです。発生からこれまで、犯人情報がほとんど出なかったのは警察側に何か事情があったのでしょうか?
小川氏によると、容疑者に対する騒音苦情が入っていたことなどもあり、警察は早い段階で容疑者を特定していた可能性はあります。また、車で逃走しているため、車の情報も早い段階ではわかっていた可能性があるといいます。
小川氏は、もしナンバーが判明していたとしても、誰が運転していたかを特定するまでは時間がかかること。また、店内の防犯カメラに映っていたとしても、顔が認識できるほどでなかった可能性もあると、時間がかかったことについて説明しました。
(小川泰平さん)「早く任意同行することは可能だったんでしょうけど、公判維持、裁判を考えて、本人が黙秘・否認したとしても立証できる裏付けを取ってから逮捕に踏み切った、それが発生から6日後になったということですね」
「(容疑者は)今も『その行為はしました』と認めているんですが、『殺害した』ではなく『その行為』ということは、殺意については、認めているのかどうなのか、というところも、まだまだ取り調べが必要になってくると思います」
逮捕まで6日 早かったのか遅かったのか
小川氏は、逮捕まで6日かかったことについては、「元刑事からすると、ある程度裏付けを取っていると考えると、私は遅いとは思わない」と言及。
そのうえで、「一般の方、特に地元の方から見ると間違いなく遅いと思う。数千人の子どもが学校に登校できなかったり、非常に心配な数日間を送ったと考えると、遅いと言われても仕方がない」と見解を述べました。
今後の捜査の鍵となるポイントを聞きました。
(小川泰平さん)「まず第一は動機です。もちろん凶器の発見も必要ですが、やはり動機がどこにあるのかというところが、一番重要になってくると思います」
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