今年2月、九州規模で行われた移住希望者のマッチングイベント「移住ドラフト会議」で長崎市のチームが優勝しました。そこで高く評価されたのが、チームが制作した《長崎の魅力を伝えるツール》『〆media(しめでぃあ)』です。
長崎の飲食店の魅力を掲載した地図には、県外の視点で見た長崎の魅力が詰まっています。
「優勝チームは…長崎県長崎市、ながさき坂道クライマーズ!」
ステージ後方のスクリーンには「優勝球団」の文字。パネルに大きく書かれたイベント名は「九州移住ドラフト会議」…でも、これは野球のイベントではありません。
「九州移住ドラフト会議」とは移住の受け入れ側となる地域を《球団》、移住を希望する側の人を《選手》に見立て、プロ野球ドラフト会議さながらに両者をマッチングするものです。
ことし2月、九州内の“12球団”が参加して行われた移住ドラフト会議。優勝したのは、長崎市のチーム「ながさき坂道クライマーズ」でした。
ながさき坂道クライマーズのプレゼン:
「長崎に来たならここは行かんといかんばい、これは食べんと締まらんばい、といった長崎市民が愛してやまないものを紹介しています」
長崎の魅力が 地元の人にも知られていないのは残念
「ながさき坂道クライマーズ」は長崎市の魅力を伝えるツールとして《長崎の締めくくりグルメ》に注目。それを地図にまとめた取り組みが評価されました。
ながさき坂道クライマーズ監督 品川正之介さん(32):
「本当に魅力的なお店とか誰かが愛しているお店はたくさんあると思うんですけど、そういう情報になかなか観光客がアクセスするのは難しいなと思って。長崎の隠れた魅力に外からやってきた方が触れられるような媒体になったらいいなって思いながら作ってました」
チームの監督、品川さんは横浜市出身で、28歳まで首都圏で暮らし、サークル活動で縁があった長崎市に2020年に移住してきました。
品川さん:
「長崎の歴史と文化、特に国際交流や多文化共生とかの文脈に魅かれて移住してきたんですけど、暮らしてみたら“もっと面白い魅力あるじゃん”と気付いて。長崎にしかない、長崎だからこそ存在する魅力がまだまだたくさんあるし、それが意外と地元の人にも外の人にも知られてないのがもったいないなと思って。それがこういう活動をする原動力になっている気がします」
長崎はいいとこだなぁと思えた
長崎市民が愛する店と観光客をつなぐマップ「〆media」店の外観やグルメイラストをマッピングし、その魅力を紹介しています。
実は制作したながさき坂道クライマーズのメンバーもそのほとんどが移住者や県外在住です。長崎で実際に食べ歩きをして長崎グルメの奥深さを体感しました。
ながさき坂道クライマーズ選手 神奈川県在住の行武 亜沙美さん(38):
「印象的だったのは《カレーの夕月》さんで『外食することが少なかった昭和の時代に、夕月さんの美味しいカレーを食べるのが唯一の楽しみでした』っていう回答があって。実際に行ってみて『あっこれが唯一の楽しみだったカレーかぁ』という回答者の追体験ができたこと」
同選手 長崎出身で神奈川県在住(取材当時)の瀬崎真央さん(24):
「私の同年代の子とか高校卒業して県外の大学に行って帰ってこないとか『長崎なんもないよね』とかって出ていく子とか多いなかで『そんなことないよ』って思う人や、楽しいこといっぱいしている人と出会えて『(長崎は)いいところだな』って改めて思えたので(参加して)良かったです」
「知らなかった」地元の若い人に響いた!
県外の人をターゲットに作成した〆mediaですが、思わぬ反応がありました。
品川さん:
「完成品をアンケートに答えてくれた友達とかに渡したら、めちゃくちゃ感謝されたんですよね。実は自分もお店をそんなに知らなくて『〆mediaで新しいお店を教えてくれてありがとう』と言われたことが結構あって。
元々は観光客とか長崎来訪される方向けに作ったんですけど、地元に住む人々──特に若い世代の方もまだまだ知らない魅力あるのかなって。そこに響いたのは意外で面白かった」
長崎の人が《当たり前》と思っていたものが、実は《長崎にしかない貴重な魅力》だったということがあります。県外出身者だから気付く長崎のよさです。
品川さん:
「長崎に移住した日の朝のことを今でも鮮明に覚えてて“鳥の鳴き声”で目が覚めるんですよ。なんだこれ?って。窓開けたら風が入ってきて、草花の香りも入ってきて。目を外に向けたら、長崎の空、山、街並みがバーンって広がって。引っ越したあとの感動がすごくてですね」
クライマックスシリーズを誘致!?
長崎の魅力を伝える機会が今年度中にやってきます。九州移住ドラフト会議の優勝で、次のイベントの開催地が長崎市になったことを市長に報告しました。
品川さん:
「クライマックスシリーズの開催地が長崎に決まりました。移住ドラフト関係者が100名以上、来崎してもちろん宿泊されます。たくさん飲食もされます」
鈴木史朗長崎市長:
「素晴らしい。長崎を出て、それでもうずっと行きっぱなし人がほとんどですから、こういうふうに長崎に戻る取り組みをしていただくことはありがたい限りです」
品川さん:「市長はUターンの先輩なんで」
鈴木市長:「そうですね、36年かかりました。やっと戻ってきました、戻ってくるといいですよね」
品川さん:
「皆さんをお迎えするためにまた毎週ミーティングしているんですよ。ずっとみんなで最高のおもてなしができるように活動していくと思います」
長崎にしかない、長崎だからこその魅力を外からの目線で再発見する「ながさき坂道クライマーズ」の活動。坂道を上るような地道な活動が続いています。
紙版の「〆media」は長崎市西坂町の「カフェと宿ROUTE」で入手することができます。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。