12月10日、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協。 日本被団協は70年近くにわたって、核兵器の廃絶を訴えてきました。 しかし被爆者の方々の高齢化が進み、その思いをどう受け継ぐかが問われています。

訴え続けてきた核廃絶 日本被団協にノーベル平和賞

ノルウェー・オスロで、凍てつく寒さの中、行われた「トーチパレード」。
終点では日本被団協の人々が、ホテルのバルコニーから歓声に応えました。

12月10日(火)、2024年のノーベル平和賞を受賞した日本被団協。
68年前の結成以来、核廃絶を訴えてきました。

日本被団協 田中熙巳代表委員(92)
「私は長崎原爆の被爆者の一人です。そのとき目にした人々の死に様は、人間の死とはとても言えない有様でした。たとえ戦争といえどもこんな殺し方、傷つけ方をしてはいけないと強く感じました」

東西冷戦さなかの国連で、当時、代表委員だった山口さんが…

日本被団協 山口仙二代表委員(当時)
「ノーモア・ヒロシマ ノーモア・ナガサキ ノーモア・ウォー ノーモア・ヒバクシャ」

そして2016年、アメリカの現職大統領として初めてオバマ氏が広島を訪問した際には、当時の代表委員・坪井直さんが…

日本被団協 坪井直代表委員(当時)
「今後は未来志向で。あれがやったから、これがやったからと後ろを向いたらいかんよ」

オバマ氏と握手を交わし、「核なき世界を一緒に頑張りましょう」と声をかけたといいます。

そして今回の被団協のノーベル平和賞受賞。
しかし今、世界は「核なき世界」とは程遠い状況に向かいつつあります。

以前から核の脅威をちらつかせるロシアに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、こんな発言を…

ウクライナ ゼレンスキー大統領(10月17日)
「ウクライナが核兵器を保有し、わが国を防衛するか、あるいは何らかの同盟に入る必要がある」

「自分たちに必要なのはNATOへの加盟であり、核を選ぶことはない」としたものの、防衛のための核保有に言及しました。

また2023年広島で開かれたG7サミットでも、広島ビジョンの中で、核兵器は「防衛目的のために役割を果たし侵略を抑止」などと核抑止の意義を強調。

さらに日本政府は、中国やロシアなどの動向をにらみ、アメリカとの核を含む抑止力の強化を確認しています。

こうした状況に…

田中熙巳 代表委員
「核兵器の保有と使用を前提とする核抑止論ではなく、核兵器は一発たりとも持ってはいけないというのが原爆被害者の心からの願いです」

一方で、核廃絶を訴えてきた被爆者も平均年齢はすでに85歳。
田中さんは次世代を生きる人たちに期待を寄せます。

田中熙巳 代表委員
「これからは私たちがやってきた運動を、次の世代のみなさんが工夫して築いていくことを期待しております」

“核廃絶”’を受け継ぐ高校生平和大使

そうした思いを受け継ぐ若者たちがいました。

今年のノーベル平和賞授賞式の会場。日本から来た高校生たちの姿がありました。彼女たちは、国内外で核廃絶を訴えてきた「高校生平和大使」。

高校生平和大使 甲斐なつきさん(17)
「2歳で被爆した少女は12歳の時、白血病で亡くなりました」

受賞式に合わせてノルウェーを訪れ、現地の高校で、核の悲惨さを伝える「出前授業」を行いました。

高校生平和大使 津田凛さん(16)
「私はきょう、ここオスロで、被爆者が語り続けてきたメッセージは失われていないということを伝えたい」

ノルウェーの高校生と直接、意見を交わす場面も…

ノルウェーの高校生
「あなたたちは、生き残った被爆者の声を集めてるんですね」

津田凛さん
「私は日本だけでなく、世界で起きていることもたくさん学ぶ必要があると思う」

帰国した高校生平和大使の一人、津田凛さんに話を聞きました。

津田凛さん
「私たちは体験はしてないが、被爆者の方々がおっしゃったそのままで伝えること、それが語り継ぐ意味になるのかなと。核抑止論や、日本が核の傘(にいる)ということについては、高校生内ですごく話し合う議論。絶対に核抑止論は成り立たないと思うし、微力だけど無力じゃない。被爆者の方々の思いを伝えることによって、一人一人が知っていけば、少しは変わって行くのでは」

次の世代に、被爆者の思いは語り継がれようとしています。

(サンデーモーニング 2024年12月15日 放送)            

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