海外で承認されている薬が日本では使えない「ドラッグ・ロス」という問題。小児がんを患う息子の治療をめぐり、「薬があるのに…」という現実に直面した患者家族を取材しました。

再発時の生存率は1割…小児がんを発症した3歳児

 列車のおもちゃがお気に入りの鈴木幸之助くん(3)。両親と2歳上の姉の4人で京都市内で暮らしています。

 (父・将さん)「病気になる前はめちゃくちゃ食べていたけど、病気になってからは食べなくなって…」

 活発で公園で遊ぶのが大好きな幸之助くんですが、去年2月、熱やおう吐など体調不良が続き病院を受診したところ、ある病気が見つかりました。

 (父・将さん)「最初に病院に行ったときに見せられた検査画像。おなかが全部腫瘍で臓器が全く見えない状況」

  腎臓の上の「副腎」にあったのは約11cmの腫瘍、「神経芽腫」と呼ばれる小児がんの一種でした。がんは首のリンパ節などにも転移していて再発の可能性が高い「高リスク」と診断されました。抗がん剤治療などが行われましたが、副作用で食欲がなくなり、徐々に体力が衰えていきました。

 しかし、つらい治療を続けがん細胞が確認されない状態になったとしても、高リスクの神経芽腫の再発率は4割~5割。再発した場合の生存率はわずか1割程度とされています。

 (母・瑠衣さん)「日常を過ごしているだけでふと悲しみが押し寄せてきたりとか。なんか幸せやなと思ったり…ずっと一緒にいたいなと思うし、ほんまに早く元気になってほしい」

 両親は再発リスクを下げるための治療を模索しますが、国内には幸之助くんが受けられる治療法はありませんでした。

アメリカで“希望の新薬”が承認 でも国内では使えない…

 そんななか、去年12月、アメリカで一筋の光となる薬が承認されます。

 (京都大学病院・小児科 窪田博仁医師)「神経芽腫の再発率が過去の治療成績に比べると下がったことが示されて、アメリカで承認に至った」

 再発リスクを軽減することを目的とした新薬、「エフロルニチン」。飲み薬のため体への負担も少なく、幸之助くんにも投与できることがわかりました。しかし、日本で使うのには大きなハードルがありました。

 海外では承認されている薬が国内では承認申請すらされておらず使えない「ドラッグ・ロス」という問題です。小児がんでは特に深刻で、背景には患者が少ないことから臨床試験の実施が難しいことや、採算が取りにくいことなどがあるとされています。

 (京都大学病院・小児科 窪田博仁医師)「患者さん自身は、薬が世の中にはあるのに日本では使えない。(薬への)アクセスを諦めないといけないなかで非常につらい思いをされていると思いますし、私たちも非常にもどかしい」

健康保険など適用されず費用は5500万円

 幸之助くんの両親はアメリカから取り寄せようとしましたが、国内では承認されていないため健康保険などは適用されず、費用は5500万円あまりと莫大になります。

 (父・将さん)「最初は1000万円~1500万円くらいじゃないかと。持ってる家とかを売ってなんとか準備できるなという話だったんですけど、見た瞬間すごい金額だなって…」

 両親は「少しでも生存率が高くなるなら諦めたくない」と悩んだ末、寄付などで治療費を集めることにしました。

 (父・将さん)「息子が病気と闘っております。応援していただければ…」

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