畜産が盛んだった福島県葛尾村は、かつて100軒以上の農家がありましたが、現在、その数は5分の1に留まっています。村の基幹産業復活に向け、営農を再開した若手農家にカメラを向けました。
家族にとって、ウシは生活の一部。これまで村は、畜産と共に歩んできました。
丹伊田拓真さん「保育園が早く終わった日は、息子は大体ここに来ますね。公園みたいなところなんじゃないですか」
葛尾村の繁殖農家、丹伊田拓真(にいた・たくま)さん(37)。5年前に村に戻り、現在、200頭ほどのウシを育てています。
丹伊田さん「ウシの調子を見ながらエサの量を調整するので、変化に敏感に対応できるようにすることが大事」
原発事故で一時は避難も…
原発事故で一時、全村避難となった葛尾村は畜産が盛んな地域でした。丹伊田さんは、祖父の代からおよそ50年続く畜産農家です。
丹伊田さん「ここが元々ある牛舎で、もともと5棟あった。家族みんなが避難してそれによって取り壊した」
避難を余儀なくされても、代々続く畜産を辞めようとは思いませんでした。
丹伊田さん「ウシがいて生活が成り立っていたというのが小さい時からですし、それによってつながった人も大勢いますし、ウシがなければいまの人生はない」
震災前、村には110軒の畜産農家がいましたが、現在、その数は5分の1ほどの21軒。再開を後押ししようと、村は新しい生産施設を整備。丹伊田さんは、今年1月からこの場所でウシを育てています。
丹伊田さん「生まれたての子で、4~5日は経っている。この時期は余計(注意)ですね。気温もどんどん下がるので。子牛は弱りやすいので、日々気を付けなけらばいけない」
そんな丹伊田さんを支えるのは、妻・里早(りさ)さん(30)。自身も従業員としてウシたちと向き合っています。
妻・里早さん「(畜産は)守っていかなければいけない。プレッシャーではないが、責任感を一緒に持って、二人三脚で今後もやっていきたい」
丹伊田さん「不満や文句も言わずに付いて来てくれるので感謝ですね」
子牛を競りに 1頭に対する“リレー”
新しい仲間も加わりました。仙台出身の樋山勝斗さんです(34)。農業高校出身の樋山さんは、これまで別の仕事に就いていましたが、畜産という夢を叶えるためことし、村に移住しました。
樋山勝斗さん「チャンスをもらったと思っているので、葛尾村で畜産を勉強して、村に少しでも貢献できる畜産農家になりたい」
この日、行われたのは子牛の競り。競りにかけられたのは、生後およそ10か月を迎えたおよそ340頭です。今回、丹伊田さんは、6頭を出荷。競りの結果、平均を上回る価格で落札されました。
丹伊田さん「1頭に対してのリレーだと思っている。きょう取り引きして次の農家へ、おいしいお肉になるように育ててもらえれば」
原発事故で、一時は途絶えた葛尾村の畜産。丹伊田さんは、村の産業を守り、次の世代へとつないでいきます。
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