会社の同僚を自殺と見せかけ線路内に立ち入らせ、電車と衝突させて殺害したなどとして、社長ら4人が逮捕されました。警視庁は被害者が4人に日常的に「いじめ」を受け、心理的に支配されていたとみて調べています。
■自殺装い、同僚を電車に衝突させ殺害か
去年12月3日の午前0時すぎ。
東京・板橋区にある東武東上線の線路付近の防犯カメラには、踏切のすぐそばに黒いワゴン車が停まります。
そして…電車が急停車。
電車にはねられた塗装業の高野修さん(当時56)が死亡しました。
当初は自殺が疑われましたが、8日、事故ではなく、殺人事件として急展開をみせました。
殺人と監禁の疑いで逮捕されたのは、▼高野さんが務めていた塗装会社「エムエー建装」の社長・佐々木学容疑者(39)、▼高野さんの指導役だったという島畑明仁容疑者(34)、▼同じく従業員の野崎俊太容疑者(39)と、▼岩出篤哉容疑者(30)の4人です。
4人は、高野さんを黒い車に監禁して踏切に連れていき、線路に立ち入らせて電車と衝突させ、殺害した疑いなどがもたれています。
■川に飛び込み仕向けた疑いも 容疑者のスマホに残っていた動画
警視庁によりますと、2023年12月2日午後10時ごろ、4人は板橋区にある高野さんの自宅アパートに集合。
何らかの「話し合い」を行い、午後11時半ごろ、4人は高野さんを島畑容疑者が運転する車に乗せて監禁、野崎容疑者も自分の車で移動をはじめます。
まず向かった先は…。
東京と埼玉を結ぶ「笹目橋」です。
捜査関係者によりますと、高野さんを橋に連れて行き、川に飛び込むよう仕向けているような音声が、野崎容疑者のスマートフォンに残っていたということです。
野崎容疑者はその場でこんな話も。
野崎容疑者
「川は嫌だけど、線路には行きたいんだって」
この言葉の通り、4キロほど離れた踏切に移動し、高野さんを殺害したということです。
会社の同僚同士で起きた今回の事件。
事件後、社長の佐々木容疑者は、自宅の玄関先でたばこを吸うなど普段と変わらない様子に見えます。
佐々木容疑者を知る人
「やんちゃなお父さんかなとは思ったんですけど、普通に会えば挨拶もきちんとしてくれますし、普通のお父さんというか」
佐々木容疑者を知る人
「(佐々木容疑者の自宅の)庭というか前のスペースで、仲間とバーベキューしたりする姿をよく見かけてました」
警視庁はこれまでの捜査から、会社内で高野さんへの日常的な「いじめ」が繰り返されていたとしています。
佐々木容疑者らのスマホには、高野さんの下半身に棒を突き刺す動画や、やけどを負った高野さんの写真が残っていたということです。
高野さんの小中学校の同級生は。
高野さんの同級生
「(高野さんは)気が弱くておとなしいタイプだったんで、そこをつけ込まれちゃったのかもしれない。ひどい話で大変ショックですね」
高野さんは北海道の函館市出身。
地元の塗装会社に就職していましたが、2015年に佐々木容疑者の会社に転職したといいます。
警視庁は殺人容疑で逮捕した理由について「高野さんを心理的な支配下において線路に立ち入らざるを得ない状況にまで追い込んだ」としていて、全容解明を進めています。
■踏切自殺装い…元同僚を殺害か
井上貴博キャスター:
ここからは、いかに多くの証拠を積み上げていくことができるか。非常に難しい捜査が続いていきます。
2023年12月、東武東上線の防犯カメラには容疑者の車を降りた高野さんの姿がありました。自ら線路に立ち入り、電車にひかれる様子が防犯カメラに映っていました。
逮捕される前の任意提出では、容疑者らのスマートフォンには高野さんに暴行を加える動画などが残っていました。こういったところから捜査が一つ一つ進んでいきました。
■「殺人罪で起訴するのはかなり難しい」捜査のポイントは
元東京地検特捜部 副部長の若狭勝弁護士によると「いじめ的な暴行を加えており、写真など残っていたとしても殺人罪で起訴するのはかなり難しい」ということです。
その内容は、凄惨ないじめで暴行に近いものですが、どのように殺人罪を立証していくことが考えられるのか。
若狭弁護士によると「被害者が目の前にある暴行・脅迫から逃れるためなどの状態、音声・動画など物的証拠や供述、さらに容疑者が殺意を持っていたか」を裏付けることが大変難しいということです。
ホランキャスター:
殺人などであれば逮捕ですが、起訴されても、殺人罪で起訴とならない可能性もあるということですね。
井上キャスター:
そこも視野にということはありますけれども、1人の尊い命が失われた、そのことに向けての警視庁の執念の捜査がこれからも続くということになります。
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