山口県でフラダンスというと、瀬戸内のハワイ・周防大島町を思い浮かべますが、24年11月、岩国総合支援学校の高校生が文化祭でフラダンスを披露しました。喜びや思いやり、謙虚な気持ちなどの意味を持つ「アロハ」の心で生徒たちは何を見つけたのでしょうか?

「フラの楽しさを知ってもらいたい」まずは衣装選びから!

ハワイアンの音楽と、先生の指導に合わせて練習に励む3人。

文化祭で披露するフラダンスの練習です。

フラを呼びかけたのは森元有美先生。

長年、周防大島高校でフラダンスチーム、アロハ・フラ島高の指導にたずさわってきました。22年、岩国総合支援学校に赴任し、ここでもフラの楽しさを知ってもらいたいとフラダンスに取り組んでいます。

森元有美先生
「レイはみんなを悪い物から守ってくれる。みんなが踊って見てる人とみんなの気持ちがクルッと1つになるよっていう話もしたと思います」

3人は高等部の2年生で佐伯直哉さんは初めてのフラ挑戦。町支春風さんと藤井美音さんは23年につづいて2度目です。

佐伯直哉さん(2年)
「レッツフラ。楽しいです」

町支春風さん(2年)
「気持ちが変わったなみたいな楽しくなるなみたいな」

この日はステージ用の衣装を選ぶことになりました。

町支春風さん(2年)
「どのスカートがいい?しーちゃん(藤井さんの愛称)赤か青かオレンジか?」

町支さんは青、藤井さんは黄色を選びました。佐伯さんは赤いハイビスカスがアクセントになっているシャツ。

先生たちの評判も上々です。

「頑張って練習していこうね」支え合って成長する生徒たち

岩国総合支援学校には、小学部から高等部まで障害がある児童・生徒135人が通っています。

障害の程度はさまざまですが、各教科以外に自分の能力を伸ばしたり、社会参加に向けた知識や技能を身につけたりできるよう、作業学習や自立活動などの授業が行われています。

藤井さんはみんなから「しーちゃん」と呼ばれています。

ディスニーと広島カープのファンで、小さいころから踊りが大好きでした。でも、高いところや人前に出ることが苦手で、ステージに立つとあまり動けませんでした。

踊りの最後のところで、しーちゃんはクルッと1回転することができません。

そんなしーちゃんを気にかけているのが、チームのリーダー的存在とも言える町支さんです。

町支春風さん
「最後の回るのが不安?そこさ今から練習していけばいいと思うよ。頑張って練習していこうね」

障害そのものが不幸だとは思わない。幸せならそれでいいんじゃないか。

踊りが好きなしーちゃんに、両親はダンスを習わせたこともありました。ダウン症で足腰が弱く、長時間の歩行が難しいしーちゃん。

しーちゃんが生まれたとき、障害について夫婦で話し合い考えたといいます。

父・藤井武夫さん
「僕たちを選んでくれて生まれたんだし障害があることが不幸なんじゃないんじゃないか。障害に負けてしまうというか障害にくじけてしまうというか、そのことが不幸であって障害そのものが不幸だとは思わない。その子が幸せならそれでいいんじゃないかって、そう思えたよね。思えるようになってからすごい前向きになって」

晩ごはんの食卓に、しーちゃんが箸を並べ始めました。

(Q:これしーちゃんの役目なんですか?箸の配膳)
母・藤井由香さん
「きょうは張り切ってるんだ思います。上手じゃ、しーちゃん」

中学1年と小学6年の妹もしーちゃんの力強い味方です。

父・藤井武夫さん
「この子が生まれたから”かすがい”っていうか、特に大きなかすがいになった気もするし、家族の絆っていうのが強くなってるかなっていうふうには思いますね」

母・藤井由香さん
「しーちゃんもどんな面で妹たちを支えられるかわかりませんけど心の支えでもいいので、お互いを支え合って幸せに楽しい日々を過ごしてもらえたらなと思います」

フラは「感謝を神様にささげる踊り」 いよいよ本番前日…

フラは、豊かな実りや日々の幸せへの感謝を神様にささげる踊り。踊る人と見る人の笑顔で、互いにパワーを受け取ると言われます。

「しーちゃん、回った!最後自分で回ったじゃん」

本番前日しーちゃんはできなかった最後の”クルッと1回転”ができました。

文化祭では日頃の作業で作った手工芸品などが販売されるほか、カフェもオープンして来校者をもてなします。

しーちゃんが作ったエコたわしや、佐伯さんが収穫したダイコンも並びました。

フラダンスの取り組みは3年目になりますが、コロナ禍などの影響もあり、ステージ上で披露するのは今年が初めてです。

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