石破内閣の支持率が前回調査から3.2ポイント上昇し42.1%となった。自民党の支持率も前回から3.6ポイント上昇した。この1か月で支持率アップの要因はどこにあったか?
さらに今回の調査で、国民民主党の結党以来、初めて立憲民主党の支持率を追い抜き、自民党に次ぐ2位となった。代表の不倫問題も、ほぼ支持率に影響しない国民民主党の“我が世の春”はいつまで続くのか。
「数字が落ちず幸い」支持率微増に安堵した石破総理
時の総理やその周辺は「世論調査の支持率に一喜一憂しない」と常套句のように答えるが、実際はものすごく気にしている。新しい内閣が発足したときや、政権の目玉政策が発表されるときなど、国民がどう評価しているかは報道各社の世論調査で知ることができるからだ。JNNの12月の世論調査で石破内閣の支持率は42.1%と微増した。結果を聞いて総理は周囲に「数字が落ちなかったのは幸いだ」と安堵したという。
では支持率が微増した原因はなにか?
前回調査は11月2日、3日で、この1か月間、何があったかというと、特別国会が召集され第2次石破内閣が発足したこと。さらに衆院選で議席を伸ばした国民民主党が主張する「年収103万円の壁」の見直しをめぐり、与党と国民民主の政策責任者会合を断続的に行い、それを盛りこんだ経済対策を仕上げた。石破総理はAPEC、G20サミット出席のため南米に外遊した。会議の成果よりも集合写真に間に合わなかったことや総理のマナーの悪さが印象に残った。
大きな原因があるように思えないが、それでも支持率が上がった理由を総理側近の一人は「ひとつひとつ丁寧に向き合う姿勢が評価されたのでは」と解説する。
ただ支持率があがったといっても依然、不支持率のほうが高い。
年齢別に内閣支持率をみると、支持率が不支持率を上回るのは「60代以上」だ。各年齢層で不支持率の方が高く、60代以上の“シニア世代”支持率がようやく50%を超え、不支持率と逆転する。
一方で支持率「最低」の世代は「30代」で支持率は20%台、不支持率にいたっては75%だ。
支持率が2位に浮上の国民民主 不倫発覚しても「代表続投容認」が57%
一方で、若者の支持率が高いのが国民民主党だ。とくに「18~29歳の男女」の政党支持率は国民民主党が1位で自民党を抜いている。さらに12月調査で目を引いたのは、国民民主結党以来、はじめて立憲民主の支持率を抜いた。
国民民主党は2018年の結党以来、玉木代表が「視力検査のようだ」と自虐的に話すほど支持率は低迷していたが、衆院選中のSNS効果、「103万円の壁」の引き上げなどを訴え、結党6年半でようやく結果が出始めた。
そうした最中の玉木代表の不倫発覚だったが政党支持率にさほど影響しておらず、「代表を続けて良い」との声が6割近くに上っている。女性でも“容認”の声が55%で変わりない。やはり代表としての資質を問題視するより、「103万円の壁」引き上げに期待を寄せている世論が多いということかもしれない。国民民主党の倫理委員会は、玉木氏に3月3日まで「3か月の役職停止」の処分を下した。結党以来、“党の顔”であり続けた玉木氏に代わる人もおらず、影響はどの程度広がるか。
他党からは“与党気取り” 国民民主はどこにむかうか?玉木氏の胸の内は…
国民民主党は今後どういう道を歩むのか。選択肢としては主に3つある。1つは自民、公明の連立に加わり、与党入りをめざすこと。2つめは、政策ごとに連携する相手を選ぶこと。3つめは、他の野党と連携して政権交代をめざすこと。
では、今のスタンスはどうかというと、玉木氏はこのように話す。
「野党から離れていないし、与党にも近づいていません。私達は各党等距離、あえて言えば、国民の皆さんに近距離でやっていきたいと思います」(11月28日 代議士会での挨拶)
つまり政策によって、与党についたり野党についたりするという2番目の立場だ。世論調査の結果でも「政策ごとに連携する相手を選ぶ」が最も多く52%だった。国民民主党の支持層も、71%の人がこの立場を望んでいる。
一方、立憲民主党としては、国民民主党は「兄弟政党」と位置づけており、協力して政権交代を実現したいと考えているが、玉木氏は「憲法、外交・安全保障、エネルギーなど基本政策が一致していない」として消極的だ。
こうした国民民主党のスタンスに立憲民主党の中堅議員は「与党気取りだ。自分が国を動かしているみたいに思っているんだろう」と厳しい。
では、将来的に「与党入り」はあるのだろうか。
玉木氏はこれまで何度もこの質問を聞かれては「連立は考えていない」と否定している。ただ衆院選で大幅に議席を伸ばし、状況は一変した。選挙戦で訴え続けた「103万円の壁」は自公との協議で、上げ幅はともかく、引き上げることが決まった。その高揚感からか、玉木氏は周辺に「今後どこまで与党と与するべきか正直迷っている」と吐露している。訴えた政策を実現するためにはどういう行動をとるべきか、これが玉木氏にとって最大の判断材料となる。
受け入れる側の自民党はどうか。
かつて少数与党に陥った自民党は、“宿敵”社会党と連立を組んだり(94年自社さ連立)、“悪魔にひれ伏してでも”小沢一郎氏が率いる自由党と組んだり(99年自自公連立)、政権基盤を安定させることに腐心してきたが、現状そのような動きは表面化していない。
第2次石破内閣が発足した11月11日夜、“少数与党”になったことについて聞かれた石破総理は、こう語った。
「ある意味でこういう状況というのは民主主義にとって望ましいことなのかもしれません。与党が過半数を割ったことが望ましいと申し上げているのではなくって、より議論が精緻になるということだと思っております」(11月11日記者会見)
石破総理にとっても、がむしゃらに連立相手をさがし政権を安定させるよりも、まずは、しばらく野党と丁寧に合意形成をはかることを優先する方針だ。
自民党支持層の“半数以上”が理解できない「企業・団体献金」のゆくえ
先の通常国会で野党から“ざる法”と酷評されながらも成立した改正政治資金規正法。政策活動費は残したまま、10年後に領収書を公開するなど、およそ国民の理解が得られるものとはならなかった。成立後の世論調査(24年7月)で、この法律では“政治とカネ”の問題の再発防止には「ならないと思う」人が76%にのぼった。
衆院選で惨敗し少数与党となった石破総理は、年内の政治資金規正法の再改正に意欲を示すが、容易ではない。
立憲民主幹部が「唯一最大」という争点が「企業・団体献金」の扱いだ。自民党は年間の収入総額のうち10%程度が企業・団体献金で他党と桁違いだ。この重要な資金源を維持したい自民党は、企業の政治献金を認めた1970年の最高裁判決を根拠に「我々は禁止より公開だ」と主張している。
一方、野党は「30年前の政治改革で廃止が決まったのに、いまだに政党交付金と二重取りしていることはおかしい」と批判(立憲・野田代表)し企業・団体献金禁止を主張している。さらにもうひとつの疑念は企業献金は政策が歪められる、影響を与えるのではないかという論点だ。石破総理は国会審議で「献金で政策がゆがめられたとの記憶はない」と繰り返すが、その根拠が乏しい。
法案に企業・団体献金禁止を「盛りこむべき」との世論は6割を超える。自民党層に限っても56%となっていて、企業献金をめぐる国民の理解は広がっていない。
野党全党が連携して、企業・団体献金禁止を自民党に迫れるかというと、野党も一枚岩ではない。ここでも国民民主党が、野党案は禁止の対象から政治団体を除外していることから「抜け道ができる」として賛同していない。
今後、この「企業・団体献金の禁止」が法案に盛りこまれるかは、こうした国民民主の動向、そして世論の動向がカギを握りそうだ。
TBS政治部・世論調査担当デスク 室井祐作
【12月JNN世論調査の結果概要】
●石破内閣の支持率は42.1%(前回調査より3.2ポイント上昇)、不支持率は52.4%(前回調査より4.9ポイント下落)
●政党支持率は、自民党28.2%(前回より3.6ポイント上昇)、立憲民主党8.5%(前回より4.3ポイント下落)、日本維新の会4.0%(前回と変わらず)、国民民主党8.8%(前回より0.3ポイント下落)
●国民民主党が主張する年収「103万円の壁」を178万円に引き上げることについて「賛成」61%(前回より5ポイント下落)、「反対」17%(前回より3ポイント下落)
●不倫を認めた国民民主玉木代表について「代表を続けても良い」が57%、「代表を辞任すべき」が35%
●今後の国民民主党の立ち位置について「自公の連立政権に加わる」が16%、「政策ごとに連携する相手を選ぶ」が52%、「ほかの野党と連携して政権交代をめざす」が23%
●政治資金規正法の再改正をめぐり、「企業・団体献金の禁止」を「法案に盛りこむべき」は64%、「盛りこむ必要はない」は25%。自民支持層に限っても、「盛り込むべき」56%、「盛り込む必要はない」34%。
●国民民主党が主張する原発の新増設に「賛成」は36%、「反対」は51%
●国政選挙や自治体選挙でSNSや動画サイトの情報を「大いに参考にする」が6%、「ある程度参考にする」が37%、「あまり参考にしない」が33%、「全く参考にしない」が23%
●12月2日から「マイナ保険証」に移行することに不安を感じるかどうかについて「大いに感じる」が25%、「ある程度感じる」が34%、「あまり感じない」が25%、「全く感じない」が13%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。
11月30日(土)、12月1日(日)に全国18歳以上の男女2418人〔固定811人、携帯1607人〕に調査を行い、そのうち41.5%にあたる1003人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話454人、携帯549人でした。
インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。
より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。
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