デジタル時代の波に押され、年賀状を出す人が年々減少しています。「年賀状じまい」という言葉も聞かれる中、街や企業の声、日本郵便の対策、文具店の現状を通して「年賀状のいま」を探ります。消えゆく年賀状文化に寂しさを感じる一方、新たな形でつながりを続ける可能性も見えてきました。あなたは今年、年賀状を出しますか?

【住吉アナウンサー(以下:住)】長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン今週も平家達史NBC論説委員(以下:平)とお伝えします。今回のテーマは「どうなる?今どきの年賀状事情」です。

【住】ことしも残り1か月を切りました。年賀状の準備に入る時期になっていますが、「どうなる?」というのは年賀状を出す人が減っている現状を指しているわけですね。

【平】はい。近年では「年賀状じまい」という言葉も注目されています。
まずは、今年も年賀状を出すのかどうか、そして出さないのであれば理由は何なのか、街の声を聞きました。

街頭の声
【年賀状出します派】
「年賀状出しますよ年賀状だけでしかやり取りしない人も結構いるんで」「年賀状でああこういう状態なんだっていう一言が添えてあるだけでも安心しますし」
「やっぱり年賀状って嬉しいですもんね下手でも手書き」

【毎年出してるけど…派】
「毎年出してるんですけど高くなりましたね」
「とにかく郵便物が上がったということで年賀状じまいですかね。そちらの方に少しずつはなっていくんだろうとは思います」
「何年か前に友達から年賀状じまいをしますっていうお便りをいただいてああもうそろそろそういう時代なんだなと」
「仲いい友達ぐらいですもうLINEとかであいさつできるから」
「お世話になった方には出そうかなと思ってますけれど時間がかかってしまうというのと最近のことを考えてコストもかかってしまうし」

【デジタル移行派】
「2~3年前ぐらいまでは出してたかなってSNSに写真載せて一気に」「インスタとかSNS系がもう主になってしまったので」
「メールがもう多くなりました」「今の時代に合ったスタイルっていうのがデジタルなので」

【平】インタビューで出てきた「年賀状を出さない理由」や「年賀状じまいを検討している理由」はー
●書くのに時間がかかる
●制作費や郵便料金のコストがかかる
●メッセージアプリやメール・SNS等で代用できる
●ことし10月の郵便料金値上げ
などがありました。

実際に出しているのは何割くらい?

【住】実際に年賀状を出す人はどれぐらいいらっしゃるんでしょうね。
【平】去年の暮れに文具メーカーが年賀状を出すかアンケートしたところ、「出す」と答えたのは、43.8%で、1979年の調査開始以来、初めて半数を割り込んだということです。

【平】年賀状を出すかどうかの判断に影響を与えそうなのが、ことし10月の郵便料金の値上げです。はがきの郵便料金は63円から85円になりました。日本郵便では今後も安定的な郵便サービスを維持・継続するための料金改定だとしています。年賀状の発行枚数など、近年の年賀状事情について日本郵便の担当者に取材しました。

長崎中央郵便局総務部 川上尚起部長:
「メールやSNSなどの広がりなどにより、”当初発行枚数”は14年連続で減少しています。郵便料金改定の影響だけでは考えることは難しいですが、お客様の需要などを総合的に勘案して(来年用の)当初発行枚数は過去最高の下がり幅となっています」

ピークは2004年用の44億枚あまりで、2009年販売分からは毎年数を減らしていて、来年用は10億7千万枚と、前年から3億7千万枚も減っています。

長崎中央郵便局総務部 川上尚起部長:
「ごあいさつの手段は多様化しても、心を込めて年始のごあいさつをしたい、年賀状を受け取ると嬉しいというニーズは根強く存在しております」

年賀状離れに歯止めをかけようと、日本郵便では大阪・関西万博にちなんだものや印刷されたQRコードでギフトを贈ることができるものなど、需要の底上げにつなげるための対策を講じています。

【住】発行枚数の減少幅は衝撃的でした。「デジタル時代なんだからしょうがない」とも言えますが、やはり寂しさはありますね。
【平】来年用の当初発行枚数は10億7千万枚で前年比25.7%減、これは今年用が14億4千万枚で前年比12.2%減だったことを考えると急激な年賀状離れが進んでいることがうかがえます。

時間をかけて1枚1枚年賀状を作るというのは今の時代に重視されている「タイムパフォーマンス」の観点から敬遠されているのかもしれません。

【住】2003年のピーク時から34億枚近く減っているということは、個人間での年賀状のやり取りだけでなく、企業間においても変化が起きているということなんでしょうか。

【平】はい。近年は企業同士でも年賀状を取りやめる動きが出ています。
「年賀状じまい」をするという県内企業に話を聞きました。

会社も「年賀状じまい」

金属加工などの高い技術力で県外メーカーからも評価される長崎市の早瀬鉄工所こちらの鉄工所は、今年送付するのもので年賀状じまいにすると決めています。

早瀬鉄工所 池山真郎副社長:
「従来は大体300枚ほど年賀状を出していましたが、昨年ぐらいから少し絞りまして150枚ぐらいに見直しをしました。各取引先の方からも、今年から”年賀状じまい”をするという連絡があっていますので、弊社の方も来年(送付分)からはもう年賀状は出さない予定です。全社的にペーパーレスを推進しておりますので、SDGsにも少しは貢献するでしょうから時代の流れに合わせていくというところが一番かなと思っています」

【平】法人が年賀状じまいをする理由として言われているのが、
●経費削減
●業務負担の軽減
●虚礼廃止の一環
●デジタル化・ペーパーレス化
●環境への配慮
といったことです。

年賀状ないと寂しい?

【住】まさに「逆風の中」という感じですが、ここで改めて、年賀状の良さも考えてみたいと思います。
【平】はい。先ほど紹介した文具メーカーの調査によると、年賀状の習慣があった方がいいと思う理由について、最も多かったのが「年賀状をもらうと嬉しい」という答えで、次いで、無いと「お正月らしくなくて寂しい」、「日本の伝統文化や独自の文化が衰退してしまいそうで心配」と続きました。

【住】4位に「会えない人との連絡が途絶えてしまい困る」とありますが、お世話になっている人に感謝の気持ちを伝えられるという事や、健康状態の確認ができるといったことも含まれていそうですね。

【平】そうですね。そこに手書きや手作りのあたたかさというものが加われば、より一層、相手に喜ばれるものになるはずです。昔から年末になると、ペンなど、年賀状を作成するためのグッズを買い求めているという方も多いのではないでしょうか。街の文具店を取材しました。

”終活年賀状”が売れている

長崎市にある老舗文具店、石丸文行堂。毎年この時期には様々な年賀状用の商品が並びますが、近年は市場縮小の影響を大きく受けています。

石丸文行堂本店 平口淳子副店長:
「手書きを楽しんでもらうために色んなアイテムを揃えていますので、やはり年賀状離れというのはすごく痛いです」

厳しい年賀状事情の中、長崎らしさがあふれるオリジナルデザインの年賀状が例年通り人気だということです。一方で、皮肉にも年賀状じまいにすることを伝える商品もよく売れているといいます。

石丸文行堂本店 平口淳子副店長:
「”終活年賀状”となっております。『本年を持ちまして年賀状を失礼させていただきます』という文言が書かれております。年賀状じまいシールというものも発売されておりまして、問合せはすごくあります。確かに年賀状じまいはここ数年進んでいますが、手書きの良さをもっと知っていただきたいなと思っております」

【住】手紙というものをあまり書かないデジタル時代だからこそ、年賀状の存在は貴重な感じがしますし、悩ましいですね。
【平】これまでの「はがきの年賀状」というスタイルからメールやSNSなどへの置き換わりが進んでいますが、それが「新年の挨拶」という習慣の衰退を意味しているわけではありません。1年に一度、近況を報告し合う貴重な機会だと思います。

どのような形であっても、新年も大切な人とのつながりを継続できるように、心のこもったコミュニケーションは続けていきたいと感じました。

日本郵便によると年賀状の引受開始は12月15日からで、それより前に投函すると、一般の郵便物と同様の扱いになるのでご注意くださいとのことです。また、12月25日の最終収集時間までにポストに投函すれば、元日に確実に届くということです。

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