全国でも高齢化が進む山口県。
出生数も2022年までの10年で3割減り、少子化も深刻です。
そうした地域に元気を取り戻そうと高校生が動き始めました。
柳井市の高校生たちがオリジナルスイーツ作りに挑みました。目指すのは地元の祭りでの販売。およそ半年にもわたる取り組みを取材しました。
11月23日に開かれた「柳井まつり」
秋の収穫に感謝して行われる柳井の秋の風物詩で、67回を数えます。
色鮮やかな花傘を持った人々が、鈴の音とともにまちを練り歩く、呼び物の「花傘おどり」などがあり、4万5千人が訪れました。
祭りの楽しみの1つは食べ歩き。屋台も多く並びます。
白壁の町並みの一角にある露店。実は、地元柳井商工高校の生徒らが出店しています。
「地元を盛り上げたい」という思いから出店しました。
オリジナルスイーツづくりが始動。地元から協力者が名乗り
計画が本格的に動き始めたのはまちがオリンピックに沸いていた7月。
ビジネス情報科3年の生徒と打ち合わせをしているのは野菜ソムリエ上級プロで市内でカフェを開いている柳井さつきさんです。
地域の課題を発見し1年をかけて解決を目指すという授業の一環で「地域の活性化のために何ができるのか」という課題に、オリジナルスイーツの開発を考えつきました。
秋の「柳井まつり」で販売することを目標に、柳井さんに協力を求めました
どんなスイーツなら柳井の魅力が伝わるか。お客さんが来てくれるか。生徒が考えた案を持ち寄り、話し合います。
「野菜パウダーとかあるって聞いたので、それでフィナンシェとか作れるのかな」協議の結果、野菜を使ったスムージーとフィナンシェを作ることにしました。
柳井さんのカフェでさっそく試作です。見た目だけでなくもちろん、味にもこだわります。
試食した生徒と柳井さん
「あぁ、このビターな感じだったら、この甘いスムージーに」「合いそう?」「合うかもしれないです」
地元のまつりを盛り上げたい。おとずれた人に、笑顔になってもらいたい。何度も試作を重ねます。
柳井の魅力を伝えるためには、柳井の野菜を使いたい。そう考えた生徒らは地元の農家を訪ねました。
生徒たちはあまり足を踏み入れることがない畑に興味津々。ショウガの収穫体験もさせてもらいました。
地元産の野菜の栽培を間近に見た生徒ら。選んだのはサツマイモでした。
今年の猛暑で、水やりなどに苦労をしながら大切に育てられたといいます。生産者の思いも知り、本番に向け気持ちが高まります。
地元野菜のフィナンシェ完成。活動に共感の声も
祭りの前日。放課後、柳井さんのカフェに集まって、フィナンシェ作りと最後の準備です。
柳井さんにアイデアをもらってつくったフィナンシェは、かぼちゃ、ほうれんそう、さつまいも、にんじん。どれもおいしそうに焼き上がりました。袋詰めも自分たちの手で。
ふだんはおしゃべりな生徒たちも、真剣な表情で黙々と作業にあたります。
カップには生徒たちが、地域への感謝を込めて、ひとつひとつメッセージを書きました。
準備は、日が暮れても続きました。
迎えた「柳井まつり」当日。生徒手作りのポップを飾り、店の準備が整ってきました。
生産者・市川さんのサツマイモをより生かそうと、大学芋もメニューに加えました。柳井さんに教わりながらの調理です。
柳井商工のほかの生徒も手伝いに来てくれました。
販売するのは、イモ風味のスムージーその名も「イムージー」野菜を使ったドーナツ型のフィナンシェ「ドナンシェ」そして、地元産サツマイモの大学芋です。
午前10時、まつりがスタート。生徒たちは緊張気味です。
積極的に話しかけられず、うまく商品の説明もできません。しかし、時間がたつにつれて、足を止めてくれる人が増えてきました。なかには、この店を目当てにやってきた人も。
周防大島からの来場客
「やっぱ若い子が一生懸命やってるっていうのは、応援したくなります。なんか白壁の町並もね、閉まったまんまのところもちょこちょこ出てきちゃってるんで、そういうところで、こういうきっかけで卒業してからもなんかやりたいと思ってくれたらいいなと思います」
福岡県から柳井市へ移住
「福岡に住んでて、こっちに引っ越してきたんですけど、むこうじゃこうして触れあう機会とかもなかったんで、小さなまちじゃないですけど、ならではのよさかなと思ってます
商品は完売。高校生の元気が広がれば
お客さんからの温かいことばに、生徒たちも少しずつ積極的に声をかけられるようになってきました。
生徒
「さつまいもとにんじんのフィナンシェと、ほうれんそうとかぼちゃのフィナンシェです」
はつらつとした声に午前中のうちに用意していたフィナンシェ75セットが売り切れとなりました。
午後1時。まつりの目玉「花傘おどり」が始まると、にぎわいは最高潮を迎えます。
生徒の一部は、花傘おどりの踊り手としても参加。
ここでも、地域を盛り上げます。
露店も順調・・・と思いきや、思わぬ壁にぶつかりました。
この日の柳井は正午の気温が13.7度。この時期としては、気温は低めです。
フィナンシェと大学芋は完売したもののスムージーは残ってしまいました。
高校生呼び込み
「高校生が作ってます。いま値引き中です、いかがですか」
初めの緊張はどこへやら。みずから声をかける接客もすっかり板についてきました。
この取り組みを始めるまでは、生徒たちには、地域の人と話す機会があまりありませんでした。今回、地域を思って動いたことで、生徒たちにも変化があったといいます。
生徒に協力した柳井さつきさん
「最初はおそるおそる、なかなか意見も出なかったですけど、本当に日を追うごとに、もっとこうしたいとか、自分たちの意見をどんどん出してくれて、きょうも本当に子どもたちのほうから積極的に接客をしてくれたので、すごくよかったと思います」
生徒たち自身も、この1日で成長を感じたようです。
生徒
「あんまりふだんから話す機会がないので、地域の人と。いろんな年代の人と話が出来てよかったです。買って頂いた人全員が本当に優しくて、笑顔でおいしかったよって言ってくれたのが、本当にうれしかったです」
生徒
「海外の人とかもたまに来てくれたので、柳井のことを知ってもらえたんじゃないかと思いました」
午後3時半。思いがこもったオリジナルスイーツ、およそ200個は無事完売。
スムージーも売り切りました。
生徒
「大きい声で販売しようと思って、みんなで声かけしたら、温かく笑顔で買って下さる方々がたくさんいて、すごい、柳井ってあたたかいなというふうに思いました」
「地域のために」と始めた取り組み。それが逆に、地域の人に支えられ、地域から力をもらうことになりました。
生徒自身が柳井の魅力を改めて知ることになりました。
柳井商工は再来年2026年には、周辺の高校と再編統合されることが決まっています。だからこそ・・・
生徒
「柳井市の人口も結構減っていっていて、そういうのもあると思うんですけど、やっぱり自分たちの、高校生とかの元気さが広がっていったら1番いいかなと思いました」
「地域を盛り上げたい」高校生のその思いとパワーは確かに、届いたはずです。
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