4月17日、豊後水道を震源とするマグニチュード6.6の地震が発生しました。マグニチュードがあと0.2大きければ、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表された可能性があります。この臨時情報については運用開始からなかなか理解が進んでいないのが現状です。

南海トラフ地震臨時情報とは

4月17日に豊後水道を震源とする地震が発生し、愛媛県愛南町と高知県宿毛市で最大震度6弱、愛媛県宇和島市で震度5強を観測したほか、大分県内では佐伯市と津久見市で震度5弱を観測しました。

加賀其記者:
「震度5弱を観測した津久見市です。地震から2週間が経ちますが、石垣が崩れた現場は現在も手つかずの状態です」

津久見市

今回の地震の規模を示すマグニチュードは6.6。南海トラフ巨大地震の想定震源域内で発生していて、マグニチュードがあと0.2大きければ、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されていました。

京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
「今回の地震が仮にマグニチュード6.8だったとしましょう。そうすると南海トラフ地震臨情報(調査中)っていうのが出てくるんですね。いきなりこれが発表されます」

南海トラフ臨時情報(調査中)は、南海トラフ沿岸でマグニチュード6.8以上の地震や、通常と異なる地殻変動が観測された場合に気象庁から発表されます。

そして調査の結果、地震が発生する可能性の大きさに応じて「巨大地震警戒」か「巨大地震注意」を発表。当てはまらない場合は「調査終了」となります。

巨大地震が1週間以内に発生する頻度は「警戒」で十数回に1回、「注意」で数百回に1回とされています。

パニックにならず正しく理解を

この臨時情報の運用開始から5年。津波で8000人を超える犠牲者が想定される佐伯市で取材しましたが、市民への理解は進んでいませんでした。

――臨時情報って聞いたことありますか?

住民「臨時情報ですか?聞いたことないです」「臨時情報…聞いたことないですね」「地震に対してはもちろん危機感はあります」

内閣府が昨年度、津波想定地域の住民を対象に行ったアンケート調査では、南海トラフ臨時情報について「知っている」と答えた人は28.7%にとどまりました。

佐伯市は2021年10月に南海トラフ地震臨時情報が出た際の対応方針をまとめています。

佐伯市危機管理課 武石康磨課長:
「臨時情報については事前に避難する必要がある方には自主避難や事前避難をしてもらう」

事前避難が必要となるのはマグニチュード8以上の地震が発生し、東側または西側いずれかが動くいわゆる「半割れ」のケースで、「巨大地震警戒」が出た場合です。

佐伯市は地震から30分以内に30センチ以上の津波の可能性がある地域のうち、後発地震発生後の避難では間に合わないおそれがある蒲江全域、米水津全域、鶴見の一部地域を事前避難対象地域として避難指示などを発令し、避難を継続させます。対象者は高齢者などの要配慮者360人です。

2021年には集団での事前避難の訓練を実施していて、市は今後も訓練などを通じて臨時情報の周知を図ることにしています。

佐伯市危機管理課 武石康磨課長:
「情報の周知、訓練の実施などを予定しながらみなさんに周知していこうと考えています」

一方、「巨大地震注意」が出た場合、国は「1週間程度日ごろの備えの再確認と地震に注意しながら通常の生活を送る」ことを呼びかけることにしていて、臨時情報を正しく理解しておくことが重要です。

京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
「南海トラフ地震はいずれ必ず起こりますので、その時に向け臨時情報という仕組みがあるので、それを聞いてパニックにならないようにしっかり正しく理解しておくことが重要だと思います」

まだ一度も出ていない南海トラフ地震臨時情報。万一の際の適切な行動につなげるため、認知度を高めることが急がれています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。