2つの国の重要文化財が残る千曲市の寺が、存続の危機を迎えています。
原因は、収入確保の厳しさです。
貴重な文化財を次の世代に受け継ぐため、住職がある挑戦を始めました。


長野県内有数の温泉地、千曲市の戸倉上山田温泉。

その近くに真言宗智識寺(ちしきじ)があります。

創建は、1200年以上前の奈良時代とされる古刹(こさつ)です。

住職 西川秀純(しゅうじゅん)さん:
「こちらが智識寺の別棟でございます。大御堂と申すお堂でございます。屋根が茅葺になっておりまして、厚みも厚くてとても力強いお堂」

寺にある2つの国の重要文化財の一つ大御堂(おおみどう)。

もともとは、奈良の大仏を作った聖武天皇が別の場所に建立。

現在残る建物は、室町時代の建築と見られ、戦国武将の真田幸村も信仰したといわれています。

10年前から住職をつとめる西川秀純さん。

上田市にある寺の跡継ぎですが、同じ宗派である智識寺の前の住職が亡くなり、後継者がいなかったことから、この寺を任されることになりました。

大御堂の中にはもうひとつの国の重要文化財が安置されています。

西川秀純さん:
「こちらが大御堂のご本尊様、十一面観音さんでございます」

十一面観音菩薩立像(じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう)。

東大寺を建立したことで知られる行基の作といわれ、一本のケヤキの木から掘り出されたその像は高さ3メートルに及びます。

歴史と文化が息づく智識寺。

ですが今、存続の危機を迎えています。


西川秀純さん:
「大御堂の屋根のふき替えが一番のきっかけ。7年前に屋根の吹き替えが終わっているが、総額で4千数百万かかってしまっておりまして、多分30年後にもう一度屋根のふき替えが回ってくる」

文化財を維持するための費用の確保です。

大規模な修繕などでは、国が原則、半額を補助しますが、残りは県や市、そして寺で捻出しなければなりません。

西川秀純さん:
「こういう形で、もう手で押しても外れてしまうぐらいになっている」

敷地を囲う玉垣や、石碑など、境内のいたるところが老朽化で傷みが激しくなっています。

補修などに充てる安定した収入がないのは、もともと広く民衆のために建てられたため、檀家制度をもたないからです。

葬儀や法事も営まれません。

維持や管理は、地域の人からの寄付に頼っていて、年に1度、およそ300軒から150万円が集まりますが、足りないのが現状です。

この先、高齢化や人口減少が進み、さらに経営環境は厳しくなると予想する西川住職。

寺を守るために4月に始めたのがインターネットで寄付を募るクラウドファンディングです。

西川秀純さん:
「ずっと本当に1000年も前から守ってきた先人の方々がいらっしゃって、そして今守って下さってる方々も、今守って次につなげようという気持ちで動いてくださっているので、その気持ちをなんとか我々でくみ取らせていただきながら次につなげていこうと」

第一弾の目標額は160万円で、境内の修繕費として5月いっぱい募集します。

返礼品の中には、寺の敷地内で催しを開催できる権利も用意します。

寺と貴重な文化財を守るため、西川住職は、人が集まる新たな仕組みも作っていけたらと話しています。

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