仙台市の路線バスは、昨年度まで4年連続、全ての路線で赤字となっていて、厳しい経営状況が続いています。利用者の減少が要因で仙台市交通局は、再来年に値上げする方針を示しています。市バスの現状と課題を取材しました。
赤字路線の現状は…
仙台市宮城野区岩切にある市バスの余目停留所。平日午前9時過ぎ、3人が乗り込みました。沿線には病院やスーパーなど生活に欠かせない施設がある余目線。しかし、終点の陸前高砂駅までおよそ20分の運行でこの便の利用者は6人でした。その次の便も4人に留まりました。
利用者:
「(利用するのは)病院に行く時だけ。あと買い物」
「毎日ではないが、パートに週4日行っているので、その時間は必ずバスに乗っている」
市バスは約38億8000万円の赤字
仙台市交通局が公表した路線別の営業係数です。営業係数は100円の収入を得るのに必要な経費のことで100を超えると赤字となります。それによりますと、昨年度は44路線全てが赤字でした。最も大きい余目線は1242。100円の収入を得るために1242円かかるということになります。
全ての路線の営業収支はおよそ38億8000万円の赤字でした。赤字が膨らむ市バス。背景にあるのが、少子高齢化と人口減少による利用者の減少です
仙台市交通局輸送企画課 佐々木隆課長:
「(少子高齢化で)通勤、通学のように毎日使う人が減っていって、通院や買い物など、利用頻度が毎日ではない人が増えていくので、乗客が自然に増えていくということはないと考えている」
市バスの利用者は、ピーク時の1980年度は年間およそ1億1000万人で、その後は年々減少しています。
新型コロナが流行した2020年度には、前の年に比べ、およそ1000万人が減少し昨年度は3394万人となっています。
「バスの利用は?」市民に聞いてみた
街の人:
「(バスは)ちょっと高い。高いから車で行った方がはやいなと思い、友達と車で(目的地に)行ってしまったり」
「バスは全然使っていないです。電車か車か徒歩で移動している)」
「自家用車だとバスや公共交通機関が停車しないところに行きやすいので、バスは普段利用しない」
厳しい経営状況を受け、市交通局は今年4月からのダイヤ改正で44路線のうち30路線を対象に平日の運行を1日120便、減らしました。
赤字幅が最も大きい余目線も昨年度までは平日と土日祝日に、合わせて23本運行していましたが、今年度からは平日のみ7本の運行に減便となりました。
利用者:
「(路線が)なくなるんじゃないかと心配やはりあれば(便利)」
「乗る方からしたら無いと不便」
仙台市交通局輸送企画課 佐々木隆課長:
「その路線を廃止するとなると、他に交通手段を持たない人はバスに乗るしか移動の手段がないので、そういう人の移動の手段を奪ってしまうことになるため、さすがに廃止というのは今のところ難しい」
30年据え置いていた運賃を値上げへ
交通局は、市バスの経営状況を知ってもらおうと、営業係数の一覧を車内などに掲示するほか、ニーズに合わせたダイヤ改正をして、利用されやすい環境づくりに努めるとしています。
一方で、これまで消費税を除き、30年据え置いていた運賃を、2026年10月から7%以上値上げする予定です。
仙台市交通局輸送企画課 佐々木隆課長:
「ある程度、悪天候の中でも確実に乗客を運ぶため、極力ダイヤ通りに運行していることがメリット。公共交通として、市民の皆様の足を確保していく役割を果たしていくためにも、あと1回のご利用をぜひお願いできればと」
市民の足として欠かせない仙台市バス。利便性の向上や利用促進を図りながら経営改善を目指すことが急務となっています。
交通局は、利用者促進のため、学都仙台フリーパスや都心バス均一運賃を導入するなど、市バスを利用するきっかけづくりに取り組んでいます。また、12月1日までの間、同一区間で大人1につき小学生2人まで無料で乗車できる試験的な取り組みも行っています。
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