2023年4月に当時54歳の父親を殺害した罪などに問われている次男と長男の妻の裁判員裁判。11月13日、父親殺害を実行した次男の被告人質問が行われた。この被告人質問で、次男は衝撃的な発言を連発した。裁判官をはじめ、検察官や裁判員、傍聴人、そして共犯者とされている長男の妻でさえ混乱しているように見えた。

足掛け7時間に及ぶ被告人質問のあと、疲れ切った頭に浮かんだのは「次男の主張を信じた場合、共謀は成立しないのではないだろうか?」ということだった。果たして真実は…。

殺人は認めるも、長男の妻との共謀は否定

起訴状などによると、殺害された村上隆一さん(当時54歳)の次男・村上直哉被告と長男の妻の村上敦子被告は2023年4月17日未明、宮城県柴田町西船迫1丁目の住宅の玄関で隆一さんを刺身包丁で刺して殺害したうえ、敦子被告の元夫らに依頼し、刺身包丁などを処分させた罪などに問われている。

村上直哉被告と村上敦子被告

初公判で、直哉被告は隆一さんの殺害を認めたものの、敦子被告との共謀は否定。一方、敦子被告は「共謀も殺害もしていない」と殺人罪を否認している。

争点は「2人の共謀の有無」、つまり「敦子被告が殺人に関わったのか」という点だ。

これまでの裁判で、直哉被告は「霊媒師JUN」という人物とのLINEのやりとりで隆一さんの殺害に至ったことが分かっている。

検察側は、敦子被告が「霊媒師JUN」になりすまして隆一さん殺害を指示したと主張していて、敦子被告の携帯電話を解析した警察官は「『霊媒師JUN』のLINEアカウントの登録に敦子被告の実家の電話番号が使われていた」などという理由から、「霊媒師JUN」は敦子被告だったと証言した。

しかし、敦子被告の弁護人は「霊媒師JUN」と敦子被告は別の人物だと主張している。

実母からは虐待、食事は「スティックパン1本」

ついに始まった隆一さん殺害の実行犯・直哉被告への被告人質問。まず語ったのは、幼少期に実母から受けた仕打ちや虐待のことだった。

弁護人:
「実母からされたことで覚えていることはあるか」

直哉被告:
「実母の機嫌が悪いと、パチンコ屋の駐車場に停めた車内でひたすら殴られ続けた」

弁護人:
「他には」

直哉被告:
「実母がパチンコをしている間、『後部座席で見つからないようにしていろ』と言われた。店員に見つかって、トランクに入れられたこともある。兄と自分をホテルの浴室に閉じ込めて、自分は男性と性行為をしていることもあった」

弁護人:
「実母は普段、家にはいなかったのか」

直哉被告:
「売春をしていたこともあり、2~3週間くらい家を空けることがあった。自分は掃除や洗濯など家事全般をやっていた。家事を忘れると、『クソの役にも立たねぇな』と言われていた」

弁護人:
「食費などの金は」

直哉被告:
「一週間で2000円。実母には『弁当を買え』と言われていたが当然足りないので、一袋に7~8本入った120円くらいのスティックパンを買って、一食一本で暮らしていた」

弁護人:
「学校には行っていたのか」

直哉被告:
「中学には最初は通っていたが、同級生に『カメムシ』『臭い』などと言われて居場所がなくなった。相談した教師には全身に消臭剤をかけられた」

悲惨な生活で芽生えた感情、そして不倫へ

弁護人:
「敦子被告に助けられたのは中学2年のときか」

直哉被告:
「そうです。敦子のアパートで暮らした」

弁護人:
「助けられて、母のように思っていたのか」

直哉被告:
「実母のせいで『母』という言葉には嫌悪感を持っていたので、母というより味方だと思っていた」

弁護人:
「その後、恋愛感情が芽生えたのか」

直哉被告:
「そうです。2019年か2020年頃に敦子に想いを伝えた。『霊媒師JUN』と知り合う前」

弁護人:
「不倫関係となったのは」

直哉被告:
「それも『霊媒師JUN』と知り合う前」

弁護人:
「兄の妻との不倫はまずいとは思わなかったのか」

直哉被告:
「考えたことがないわけではないが、兄は敦子に暴力をふるうこともあったし浮気もしていた」

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