アートに垣根はない。
あるアート展示会へやってきました。その場所は…ごく普通の「コンビニ」です。店内のイートインスぺースが、アートギャラリーになっていました。
コンビニ店内でのアート展示会は県内で初めて。意外な組み合わせのように感じますが、お客さんからも好評なようです。
▽沖縄ファミリーマートの担当者
「普段は何気ない空間ですがアートを飾ることで、お客さまが癒しの空間でコーヒーを飲むことができると好意的なご意見をいただいています」
作品を提供しているのは、障がいのあるアーティストを支援する団体「ドアレスアートオキナワ」。ドアレスアートとは、 “障がいがある人のアート” を表す造語です。
店内に展示されていたのはすべて、何らかの障害のあるアーティストたちの作品なんです。
「ドアレスアートオキナワ」は2022年に設立され、県内外での展示販売会や、企業とコラボした商品パッケージのデザイン、ホテルのアートコーディネートなど、数多くのプロジェクトを展開しています。
代表理事のある気づきが、活動のきっかけでした。
▽ドアレスアート 呉屋マリヤ代表理事
「アートの市場の中に、障がいのある人たちの作品が入れるのか、という部分で、
私がいいと思った作品が市場になかったんですね。展示会止まりだった」
「個人情報の壁だったり、作者がハンディを持っているということでコンタクトができないわけです。それって、もったいないですよね」
気に入った作品が、障がいがある人の作品だという理由で買えなかったときに感じた壁をなくしたい。その思いが呉屋さんを突き動かします。
「(アートに)健常者も障がい者も全く関係ないということが分かったので、アートが好きである以上、それが原動力になっています」
ドアレスアートオキナワに所属するアーティストの照屋千春さん。
創作の場である自宅は、あちらこちらに照屋さんの作品が飾られ、まるで個展会場のようです。独特の色使いで直感的に、迷うことなくペンを走らせます。
▽照屋千春さん
「悩んだりは特にないかな、楽しめばいいから。楽しむのが一番。日課なので」
“楽しむ” が口癖の照屋さん。創作意欲を刺激するのは「音楽」です。
「音楽によって集中、入るんですよ。そうじゃないと良い絵が浮かばないので、ほぼ毎日聞いてますね」
母・直子さんによると、ある日インドの音楽を聞いていると、千春さんは知らないはずの曼荼羅(マンダラ)のような絵を描いていたという驚きのエピソードも。
特別支援学校では陶芸を専攻し、卒業後も制作を続けていた照屋さんですが、コロナ禍で自宅に閉じこもりがちに。そのとき、母から渡された色紙をきっかけに、絵を描き始めました。
その後、ドアレスアートオキナワにアーティストとして所属するようになると、展示販売会で、一般の人たちにも作品を買ってもらえるようになりました。
▽照屋千春さん
「すごく嬉しいです。ドアレスアートには去年から入っているんですけど、楽しい。売れることもありがたい」
「どんな絵も、(購入した人に)楽んでもらえるのが一番」
障がい者のあるアーティストの活動の場を広げ、経済的な自立を支援する「ドアレスアートオキナワ」の取り組みは、「人や国の不平等をなくそう」というSDGsの目標につながっています。
▽ドアレスアート 呉屋マリヤ代表理事
「名前の通り、ドアがない、垣根がないということ。ドアレスアートという名前を 広めていくことがまず第一」
「国境を超えることも自由自在ですので、国内外に出していきたいというのが長期的な目標です」
「絵を生活・将来につなげていきたい。そういう絵を描いて売りたい。売った絵の収入で、自分で生活できる方法を考えていきたいな」
差別や偏見を超え、アートは平等であることを、ドアレスアートオキナワは教えてくれています。(取材 黒島ゆりえ)
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