全国各地の観光地では、インバウンド需要がコロナ禍前の水準に回復しつつあり、人手不足が深刻な課題となっています。こうした中、数時間単位の求人と働き手をマッチングする自治体公式サービスに注目が集まっています。
四国や東京からも登録
大分県内有数の観光スポット・由布市湯布院町の金鱗湖。この時期、朝霧や紅葉を目当てに国内外からの観光客でにぎわいますが、迎える側は課題を抱えています。
古式手打ちそば泉 菊地正義さん:
「4時間の間に約200人の客が来るので、てんやわんやです。ちょっと手が足りない」
金鱗湖に隣接する人気のそば店「古式手打ちそば泉」は昼の営業時、従業員8人で対応していますが、急な欠員が出た場合、やり繰りが困難になる状況です。
菊地正義さん:
「毎日フル稼働ですが、私も高齢ですし、体力的にも厳しいです。あと1人か2人いてもらえると余裕ができるかな…」
コロナ禍以降、由布市内では観光業を中心に慢性的な人手不足となっています。この課題を解消するため、市が今年8月から始めたのが公式単発求人サイト「ゆふマッチボックス」です。市内の企業を対象に、一日・数時間単位で働きたい人とマッチングする仕組みです。
由布市商工観光課 吉田賢治さん:
「気軽に使えるのがこのシステムの売りなので、九州だけではなく、四国や東京からも登録や応募があります」
働きたい人はウェブサイトやアプリを通じて登録したあと、求人情報から応募。企業側とマッチすれば採用されます。最短2時間ほどの仕事があるほか、給料の即日払いも可能です。家事や育児の空いた時間や副業などに活用でき、これまでに342件がマッチングしています。
データ分析で長期的な就労へ
大分市在住の岩崎美幸さんは10月下旬に登録し、由布市挟間町にあるカフェに5回働いています。
岩崎さん:
「働きたいけど体調を崩して無理かなと思っていた時、1日体験しながら働けるというのが自分にあっていると思って応募しました」
店では商品の袋詰めや焙煎など数時間から丸一日、仕事を依頼。店側にとっても単発で求人を出せるので便利と歓迎しています。
店主・藤井契さん:
「カフェは特に繁忙期が読めないので、ずっとは求人を出せないけど、マッチボックスであれば単発で出せるので助かっています」
由布市湯布院町の「御宿ぬるかわ温泉」。コロナ禍以降、連日満室が続いていて、清掃スタッフの負担を軽減するため、マッチボックスを活用。これまで数人とマッチングし、そのうちの1人とは長期の雇用契約にもつながりました。
御宿ぬるかわ温泉 佐藤千加子さん:
「由布市の運営だから大丈夫だろうと考え、登録して求人をかけました。パートさんの負担が少しでも減るように活用していきたいと思います」
市が導入したマッチボックスは、登録者のスキルやニーズなど様々な情報を把握することができるメリットがあります。今後、市はデータを分析して長期的な就労につなげたい狙いです。
由布市商工観光課 吉田賢治さん:
「気軽にいろんな業種にチャレンジできますので、由布市の中にも素敵な事業者がたくさんあることを知ってもらうためにも使ってほしいと思います」
インバウンド需要が回復基調にある中、スキマ時間を有効に活用できる「マッチボックス」が人手不足の観光地を救う一手になるかもしれません。
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