長野県伊那市で、無形民俗文化財の『中尾歌舞伎』の公演が行われました。

未経験の役者や小学生の女の子が、初めての大舞台に挑みました。

伊那市で29日に行われた歌舞伎公演。

およそ250年前の1767年に、いまの伊那市中尾地区で生まれた『中尾歌舞伎(なかおかぶき)』です。

大人にまぎれて一人じっと座る女の子が…。

中心人物の女性の娘役に、7歳の女の子が初挑戦しました。

伊那市の小学2年生、茅納晴(かやの・はる)ちゃん7歳。

歌舞伎に挑戦したワケは、「白塗りをしてみたい!」という好奇心から。

茅納晴ちゃん:
「笑わないとか、ずっとこうやって(正座して)座っていることとか気をつけている」

母親役の横などでじっと座っている場面が多い役柄で、少し苦戦している様子…。

でもセリフは完璧です。

中尾歌舞伎は江戸時代中期に誕生。

太平洋戦争をきっかけに一時衰退しましたが、1986年に地区の青年が復活させ、保存会を立ち上げました。

当時、20代の半ばで中心メンバーだったのが、今回、舞台監督を務める中村徳彦(なかむら・のりひこ)さん64歳です。

中村徳彦さん:
「(中尾歌舞伎を)保存していくということが一つの大きな目的でもありますので、新しい役者にも経験してもらって、次につなげていくことが大事なことかなと思います」

後段の中心人物である武将は、これまで中村さんが演じてきましたが、若手に引き継ぎました。

(中村さん指導の様子)
「ちょっと棒立ちっぽいから、また行って、セリフ言ってからこう」

地域の伝統芸能を次の世代に継承していくため、指導にも熱が入ります。

仲村啓助(なかむら・けいすけ)さん:
「大事にされてきた役だと思うので、自分がそれを受け継げるように頑張りたいと思います」

本番まであと4日、役者たちのやる気も十分です。

「一世一代の大芝居を打つつもりで頑張りたいと思います」
「声が会場全部に届くように、大きな声で迫力ある演技をしたいなと思っています」
「お母さんの目標ではかわいいって言われてねって、私は私の方見てくれればいいなって」

迎えた本番当日。

客席は170人ほどが埋めつくし、開演の時を待ちます。

(開幕)

演目は『奥州安達原三段目袖萩祭文の段((おうしゅうあだちがはらさんだんめ・そではぎさいもんのだん)』。

前段の見どころは、かつて駆け落ちし両親に勘当された、盲目の袖萩(そではぎ)が、娘のお君(おきみ)に連れられて父と母を訪ね、親不孝を詫びる場面。

観客の視線が袖萩とお君に集中する中、晴ちゃんは少し緊張した面持ち…。

それでも、母親の袖萩を守ろうとするお君を懸命に演じました。

「旦那様、奥様ほかに願いはござりませぬ。お慈悲に一言、ものおっしゃってくださりませ」

そんな晴ちゃんの演技に、客席からはたくさんのおひねりと拍手が。

今回、85回目の定期公演で初舞台を踏んだのは、役者11人のうち、晴ちゃんを含めて3人。

また、多くの役者がメインの役どころを初めて演じました。

しかし、それを感じさせない堂々たる演技で観客を魅了。

およそ1時間半の舞台は、たくさんの拍手と歓声で幕を閉じました。

茅納晴ちゃん:
「楽しかった!(きょう何点?)100点!」

新しい役者を多く起用して挑んだ今回の公演。先人から受け継いだバトンがまた次の世代へと引き継がれました。

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