大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故の裁判員裁判で、亡くなった男性の遺族が証言台に立ち、悲痛な思いや憤りを打ち明けました。
「体がバラバラの状態だった…」
この事故は、大分市大在の県道で2021年2月、時速194キロの車が右折してきた対向車と衝突。小柳憲さん(50)が死亡し、運転していた当時19歳の男が危険運転致死の罪に問われているものです。
亡くなった小柳さんは、大分市内の実家で両親らと4人で暮らしていました。12日、被害者参加制度を利用して証言台に立った姉の長文恵さん(58)は県外在住で、事故当日の午後10時過ぎに電話で悲報を受けました。
長さん:
「固定電話が鳴りました。夜中の電話は不吉で、主人にとってもらいました。びっくりした声だったので、誰かが亡くなったと思いました。正直、両親かと思っていましたが、『憲ちゃんが亡くなった』と言われ、夢ではないかと思いました」
長さんはすぐに大分に駆けつけますが、弟はすでに帰らぬ人となっていました。
「この世からいなくなったと思っていましたが、葬儀場では不思議と『弟がここにいる』とうれしい気持ちになりました。その一方で触ると冷たく、とてもつらい気持ちになりました」
「全身から血が漏れないようシーツのようなものでぐるぐるに巻かれていました。私が着いたとき、すでに棺の中に入れられていました。人手がいるときにしか持ち上げられない状況で、体がバラバラの状態だったと思います。顔だけ見ました」
「火葬後、成人男性は通常、肩やろっ骨など大きな骨が残っていると思いますが、頭部と上半身は分かったものの、ほかは粉々になっていました」
「理解できないスピードで殺された」
この事故をめぐって大分地検は当初、元少年を過失運転致死罪(懲役7年以下)で在宅起訴しましたが、遺族は刑罰の重い危険運転致死罪(最長懲役20年)の適用を求めて2万9680人分の署名を集め、地検に提出しました。
その後、大分地検は再度、現場などを調べた結果、2022年12月に起訴内容を「危険運転致死罪」に変更する異例の決定を出しました。
「過失運転致死で最初に起訴されたときに、194キロという時速を初めて聞きました。こんな速度で過失運転致死ということに驚きました。とても許せない気持ちになりました。警察や検察に『いろんな検証をしたのか?』と問いかけたら、検証をしていなかったように思えたので、机上の空論ではなく、危険性を立証すべきと訴えてきました」
被告の弁護人を通じて謝罪の申し入れがありましたが、長さんはその謝罪を受け入れていません。
「若いからスピードを出していいわけがなく、理解のできないスピードで弟が殺された事故と思います。許す気持ちは全くない。謝罪を受け入れる気持ちもない」
「194キロの事故…弟が命をかけて証明」
事故から3年9か月経って始まった裁判員裁判。最大の争点は、危険運転致死罪が成立するかどうかです。これまでの公判で検察は走行実験の結果をもとに危険運転を立証。国内最高峰のレースへの出場経験があるプロドライバーや人間の視覚を研究する准教授が出廷し、意見を述べました。
「車や天候など、交通事故を全く同じ条件で再現できるわけがない。しかし、同じ条件で唯一できた人物が2人います。1人目は加害者。『記憶がない』と言っていましたが、弟が痛みを受けた時のハンドルの手ごたえは覚えてほしかったです」
「もう1人は弟。命をかけて194キロがどのように体にもたらすか…シートベルトがちぎれて、車外まで飛ぶことを証明した。194キロの実験をしてくれたと思います。このことを証拠として見てもらいたい。生身の体でこの世に残してくれたものです」
「被告に対し、人生全て刑務所に入ってほしいという思いは残念ながらかなわないので、危険運転の20年を望みます」
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