昔の人たちは自然災害を妖怪に例えて語り継いだ可能性があります。静岡大学の学生たちが地域に伝わる妖怪の民話から災害の教訓をひも解き、子どもたちの防災教育につなげています。
「ここは静岡村、みかんとお茶のまち」
「かっぱさん出ておいで」
「なんか、ようかい?おいらを呼んだかい」
紙芝居に登場したのは、川に住む妖怪「河童」です。
「河童さんって人間に悪さをするの?」
「ああ、やっぱり、そう思われてたんだ」
「河童は大きなため息をつきました」
静岡大学の学生たちが地域に伝わる妖怪の民話を題材にして物語をつくり、子どもたちに読み聞かせをしました。静岡市を舞台に人間の女の子が河童や鬼などとの出会いを通して、妖怪が災害の危険性を伝えていることに気付くストーリーです。
「おーい、なまずよ、までいってから」
「確かに、次いった方がいい」
静岡大学大学院3年の小川日南さんは、地域に伝わる妖怪の民話から災害の歴史を研究してきました。例えば、静岡市清水区を流れる巴川にかかる橋にある河童の像です。
「河童は水の神が姿を変えたものといわれる。巴川の豊かな水源を象徴しているとともに、水の災害とか自然の脅威を表した妖怪」(小川日南さん)
巴川は50年前の七夕豪雨や2022年の台風15号などでたびたびはん濫していて、水害と切り離せない歴史があります。
小川さんが妖怪の民話が残る地域を調査していくと、河童は、大雨や洪水、龍や大蛇は、土砂災害などの災害の歴史と結びついていて、ハザードマップでも被災想定区域であることが分かりました。
災害の教訓を若い世代にどうつなげていくのか。小川さんは子どもたちが自分の身を自分で守れるように、妖怪という切り口で防災に興味をもってもらおうと考えました。そして、生まれたのが紙芝居『なんかようかい?ぼうさい妖怪!?』です。
「決して妖怪は怖い存在ではなくって、私たちに危険を教えてくれる共同的な存在なんだよと」(小川さん)
脚本を手掛けた静岡大学大学院2年竹内優芽さんは「子どもたちが見たいとか、面白いっていう風に飛びついてくれるような、キャッチーなストーリーになればいいなと思いながら書いていた」と振り返ります。
妖怪を登場させる時、「なんか、ようかい」というキャッチフレーズを決めました。
「おーい!鬼さん」
「なんかようかい?」
「もう悪さはしないでほしいの。約束してくれる?」
「約束するとも。でも俺はただ岩が落ちてくるのを人間に教えていただけなんだけどな」
「妖怪さんたちは、私たち人間に教えてくれているんだね」
紙芝居を聞いた子どもたちからは。
「初めは妖怪って悪いイメージで、災害には全然関係ないって思ったけど、学んでみて、いろんないいことをしてくれたから妖怪がいい妖怪なんだなって思った」(小学4年)
「避難経路や安全な道を調べて、いつどこでも避難できるように生かしたい」(小学3年)
「ハザードマップの見方とか妖怪を調べてみたい」(小学5年)
小川さんは「静岡の妖怪とか、言い伝えも、もっといろいろな人に知ってほしいし、そのためにはまずは子どもたちが楽しみながら、学んでいくきっかけを防災教育で妖怪を使ってできたらいいな」と次を見据えます。
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