大統領戦に圧勝したトランプ氏は、早くも政権移行に向けた動きを加速させていますが、何といっても注目は、実業家イーロン・マスク氏の処遇です。マスク氏は、新たな政権で何を担い、それは日本経済に、どんな影響をもたらすのでしょうか。(11月9日OA「サタデーステーション」)
■「ラテン票が決定打」
「いざ黄金時代へ」(トランプ氏のSNSから)
アメリカ大統領選での勝利後、初めてとなるトランプ氏の投稿です。予想外の圧勝となった背景も明らかになりました。
米クイニピアック大学 世論調査員 ティム・マロリー氏
「ラテン系アメリカ人の投票が決定打になりました」
CNNの出口調査によると、ラテン系アメリカの男性は、前回2020年の大統領選では、その多くがバイデン氏に投票し、23ポイント差をつけていました。しかし、今回は一変、トランプ氏が支持を集め、12ポイント差をつけました。
米クイニピアック大学 世論調査員 ティム・マロリー氏
「この層は人口が増え、労働者層も多く、経済的理由からトランプ氏に惹かれたとみられます』
■“トランプ関税”に戦々恐々
期待されているトランプ氏の経済政策。その柱は「減税」と輸入品への「関税引き上げ」です。サタデーステーションがペンシルベニア州で取材したラテン系アメリカ人のサミュエルさんは、経営する理髪店への影響を気にかけていました。
理髪店を経営するサミュエルさん
「トランプが関税をどうするかが気がかりです。消耗品は国外から購入することが多いので」
報告・若林奈織ディレクター(愛知・小牧市)
「トランプ氏再選は、こちらの町工場にも影響を及ぼすかもしれません」
日本で影響が懸念されるのが、アメリカへの輸出も多い自動車産業です。愛知県内で、「緩まないネジ」の開発を行う従業員5人の零細企業。年間6000万本ほどのネジを生産していて、その9割が自動車用だと言います。
アートスクリュー 松林興社長
「関税がかかって大変だなと。自動車の生産台数は落ちるんだろうなと。一番危惧しているのは(ネジの)値下げ競争みたいなことが発生すると嫌だなと」
日本経済への影響について、専門家は…
日本総合研究所 栂野裕貴研究員
「トランプ氏が選挙期間中に掲げた公約をどの程度本気で実現するかで、かなりシナリオが変わると思う。減税をするだけであれば、アメリカに進出する日本企業は恩恵を受ける可能性もある。中国への関税を60%まで上げて、かつ、日本も含めた世界全体に10〜20%の関税をかけるところまで本当にやるのであれば、日本企業にかなり痛手になる」
■トランプ氏勝利で資産4兆円増か
注目される次期トランプ政権の政策に、大きな影響力を持つとみられている人物がいます。
トランプ氏(6日)
「新たなスターが誕生した。イーロンというスターだ!」
総資産約44兆円。実業家で“世界一の大富豪”でもあるイーロン・マスク氏。トランプ氏には180億円以上を寄付してきましたが、トランプ氏の勝利後、1日だけで資産を約4兆円も増やしました。
マスク氏は、6日にトランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した際にも同席したと現地メディアに報じられ、自らが率いる「スペースX」の衛星インターネットサービス「スターリンク」の提供を通して、ウクライナ支援を続ける考えを示したといいます。
トランプ氏は9月、マスク氏が発案の「政府効率化省」を新設し、そのトップを任せる構想まで発表。
イーロン・マスク氏(先月27日)
「あなたのお金は無駄遣いされており、「政府効率化省」はそれを解決します。未来はアメージングになります!」
■“トランプ支援”真の狙いは
一方で…
トランプ氏(去年9月)
「バイデンの(電気自動車への)強制移行は、地獄への移行だ」
トランプ氏は電気自動車への補助金廃止を表明していますが、マスク氏は電気自動車大手「テスラ」の経営者として補助金の恩恵を受けてきました。マスク氏にどんな思惑があるのでしょうか?
日本総合研究所 栂野裕貴研究員
「テスラ社の電気自動車は、アメリカではかなりのシェアを占めているので、電気自動車の補助金が無くなれば、むしろ、テスラ社以外の新興メーカーへの逆風になると考えて、これに賛同している可能性がある」
マスク氏が重要視しているのは、さまざまな事業分野での「規制緩和」とみられます。
日本総合研究所 栂野裕貴研究員
「生成AIや宇宙・ロケット分野などに関する規制を、トランプ氏が緩和してくれるだろうと見込んで、支持に動いたと考えられる」
マスク氏は、ハンドルもペダルもない自動運転タクシー「サイバーキャブ」をお披露目したばかりですが、こうした自動運転車の規制は州ごとに異なるため、マスク氏はその煩わしさを嘆いていました。
また、トランプ氏に対し、「スペースX」の社員を国防長官クラスの重要ポストに起用するよう要求した、との現地報道もあり、実際の人事がどうなるか、世界が注目しています。
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