インド太平洋地域に常駐している英国海軍の哨戒艦「スペイ」が4月中旬、日英双方の部隊派遣をスムーズにする「円滑化協定(RAA)」が昨年10月に発効して以来、英艦船として初めて海上自衛隊横須賀基地(神奈川県)に寄港した。4月下旬に艦上で毎日新聞などの取材に応じたポール・キャディ艦長は「日英関係の緊密化が、実務に直接反映されるようになった」と変化の実感を語った。
RAAは自衛隊と英国軍が互いの国を訪問しやすくするためのもの。締結以前は英国軍が来日する場合、各隊員がビザを取得しなければならなかったほか、武器の持ち込みにも厳しい手続きが必要だった。
キャディ艦長は、今回の寄港で日本政府に提出したのは乗組員名簿1枚のみで、乗組員は名簿とパスポートを照合するだけで入国できたと明かし、「(スムーズさが)これまでとは全く違った」と感慨深げに語った。特に米軍基地内の港ではなく、日本側でこうした対応が取られたことに日英関係強化の影響を実感したという。
スペイは2021年に就役したばかりの新型艦で、ヘリコプターも離着陸できる広い甲板は、災害支援の際にも役立つよう作られている。就役直後からインド太平洋地域に長期派遣されており、英国のこの地域を重視する姿勢の象徴的な船の一つだ。最近では北朝鮮籍船の違法操業に対する監視活動にも従事した。
艦長は英国がインド太平洋地域を重視する理由として、世界の海上貿易の6割がこの地域を通っていることを挙げ、「英国の安全保障や経済安保は、この地域が自由で開放的であり続けることにかかっている」と述べた。
また、インド太平洋地域で影響力を拡大する中国を念頭に、「世界中の人に影響を与える安全保障問題の多くがこの地域に根ざしている」とも指摘し、「ささやかでも問題解決に協力したい」と語った。
日英間ではRAAのほか日英伊3カ国による次期戦闘機の開発を進めるなど防衛面での協力が進展している。【国本愛】
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