米国の首都ワシントンの連邦最高裁前で、人工妊娠中絶の権利を認める法制定などを求めてデモを行う中絶容認派=2024年6月24日、秋山信一撮影

 米国では5日の大統領選に合わせて、人工妊娠中絶を選ぶ権利を巡る住民投票が計10州で行われた。大統領選の激戦州だった西部アリゾナ、ネバダ両州を含む7州で中絶容認派が勝利したが、中絶の権利擁護を訴えた民主党のハリス副大統領は西部の両州でリードを許しており、ハリス陣営が期待した「相乗効果」の思惑は外れた。

 米メディアによると、アリゾナ、ネバダ両州では中絶を選ぶ権利を明文化する州憲法改正案がそれぞれ6割以上の賛成で可決された。リベラル派が多い東部ニューヨーク、メリーランド、西部コロラド各州に加えて、保守的な西部モンタナ州や中西部ミズーリ州でも中絶容認派が勝利。ミズーリ州では中絶禁止が無効になった。

 一方、南部フロリダ州で中絶規制の緩和を求める州憲法改正案は約57%の支持を得たが、可決に必要な60%に届かなかった。妊娠6週より後の中絶を原則禁止する州法が維持された。中西部ネブラスカ、サウスダコタ両州でも中絶容認派が敗北した。連邦最高裁が2022年に州による中絶禁止を容認して以降、各州の住民投票では中絶容認派が全勝してきたが、今回は結果が割れた。

 次期大統領に選ばれた共和党のトランプ前大統領は、第1次政権では中絶反対派を連邦最高裁判事に指名するなど、中絶規制強化に一役買った。しかし、22年中間選挙では中絶が大きな争点になり、共和党が苦戦。その反省を踏まえて、トランプ氏は今回の選挙戦で「中絶規制については各州が判断すべきだ」と国政選挙での争点化を避け、連邦法による一律の規制にも反対した。【ワシントン秋山信一】

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