米大統領選の投票前日の4日、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領は最重要視する東部の激戦州ペンシルベニアを中心に「最後の訴え」を展開した。大接戦のまま投票日を迎え、双方の支持者の間には「期待」と「不安」が交錯していた。
ハリス氏は、独立宣言と合衆国憲法が採択されたペンシルベニア州フィラデルフィアで遊説を締めくくる集会を開いた。米メディアによると約3万人が詰めかけ、会場は熱気に包まれた。ハリス氏は、映画「ロッキー」の舞台になった美術館前の階段下に設けた演台からこう語りかけた。
「ここは有名な階段だ。劣勢から始まり、勝利へ上り詰める象徴だ」
ハリス氏にとっては集会での熱気を勝利に結びつけられるかが課題であり、そのための鍵の一つが女性有権者の動向だ。今回の選挙は、男性がトランプ氏、女性がハリス氏をそれぞれ支持するという「ジェンダーギャップ」(男女の差)が指摘されてきた。複数の世論調査では、従来は民主党の支持基盤であるヒスパニック(中南米系)や黒人の間でも、男性の有権者が前回と比べてトランプ氏に流れる傾向が明らかになっており、ハリス氏は無党派層や穏健な保守層の女性有権者の取り込みが欠かせない。
ハリス氏は、演説ではトランプ氏の名前に言及することなく、「団結」や「明るい未来」など前向きな主張を展開。人工妊娠中絶など女性の権利擁護も従来通り強調し、幅広い層への浸透を改めて狙った。
「女性の権利のことを考えたらハリス氏に投票するしかない」。以前は共和党を支持していた女性のケリー・ウホリックさん(55)はこう話す。ただハリス氏に対しては、最後までバイデン政権との違いや政策の詳細が見えないという指摘がつきまとった。
ウホリックさんも同じように懸念を抱いている。「私の周囲にはハリス氏に投票すべきなのかまだ迷っている保守派の女性がいる。彼女たちは投票直前までハリス氏に未来を託して良いのか悩むだろう」【フィラデルフィア松井聡】
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